34.第三章 第四話




 予期もしない形で対面を果たしたアシュトンたち。心の整理が追い付かない状況で幕を開けることになった試合は当初、戦力的な地力の差からディアス側のほうが優位かと思われた。

 だが、いざ蓋を開けてみれば意外にも戦況は五分五分といったところであり、両者譲らない均衡した状態がしばらく続いていたのだった。その要因として、レオンたち紋章術師が思った以上に役割を果たしていたことが大きかった。

「プロテクション!」
「ブレス!」

 レオンとノエルは、習得しているありとあらゆる補助魔法をどんどんアシュトンとボーマンに重ねがけしていく。この効果によって数段階も肉体が強化されたアシュトンたちは、ディアス、クロード、チサトら強力な近接攻撃派が揃う相手に互角の戦いを繰り広げていたのだった。

「ありがとうっ!」

 アシュトンは援護に感謝の言葉を述べつつ、襲いかかるディアスの剣を片手で悠々と受け止める。そんな普段とは違うアシュトンの力にディアスは苦戦を強いられていた。

「アシュトン……まさかお前もチームを作って参加していたとはな」
「そりゃこっちのセリフだよ、ディアス」
「ふん。抜けがけはお互いさまというわけか……」

 アシュトンは試合開始からディアスの相手をもっぱら続けていた。この戦いでは、いかにディアスをしっかりとマークするかが鍵を握るとアシュトンは考えていた。彼ほどの実力者をフリーにさせてしまうと、セリーヌら術師が各個撃破されかねないからだ。

「しかし考えたな。補助魔法で俺に対抗するとは」
「こうでもしないと、ディアスの剣に押され負けちゃうからね」

 アシュトンはディアスの攻撃を受け止めていない、もう片方の手に握った剣を振り払う。するとディアスはそれをかわすべく、さっとアシュトンから距離を置いたのであった。

 プロテクションによって耐久力が強化され、ブレスによって操作の制度が上昇したアシュトンの双剣。普段ならば筋力で劣るゆえに両方の剣を使っても受け止めきれないだろうディアスの剣撃を、いとも簡単に片手で受け止めることができているのは、これら紋章術の恩恵といっても過言ではない。

「お前もシオンと戦うために団体戦に登録したのか?」
「悪いねディアス、ほんとは君と組みたかったんだけど、時間が無かったんだ」
「……譲る気はさらさらないぞ」
「ああ、臨むところさ!」

 次の瞬間、ディアスが大きく剣を振り上げた。彼の得意技、空破斬だ。

「ヘイスト!」

 後方からレオンの声が聞こえる。アシュトンの体はさらに身軽さを増し、簡単にディアスの放った衝撃派を避けた。それはそのままコロシアムの壁に激突し、轟音とともにぱらぱらと瓦礫が崩れ落ちる。

「いいですわよーレオン! その調子でガンガン頼みますわね!」

 それに続いてセリーヌの甲高い声が続いて聞こえてくる。最後尾で杖を振り払う彼女こそが、アシュトンチームの司令塔となっていたのだ。ディアスやクロードと対面を果たしたときにはさすがに驚きで思考が回らなかったが、それでも仲間内で誰よりも早く落ち着きを取り戻したセリーヌは相手の構成から瞬時に作戦を立てていたのだった。

「向こうに紋章術師はレナ一人しか居ませんわ。言い換えれば相手には補助呪紋を解除する手段がレナのディスペルだけということ。ニュートラルなどを使える人が居ない以上、ガンガン補助呪文を積みまくれば勝機はありますわよ!」

 この考えのもと、セリーヌは戦闘開始前にそれぞれの役割を決定した。レオンとノエルはそれぞれ補助呪紋を主体とし、セリーヌは術師のレナを攻撃して動きを止めると同時に時間を稼ぐ。アシュトンとボーマンが十分に強化されたところで、一気に勝負を決めてしまおうという算段だった。

 結果としてこの作戦は大いに嵌(はま)るところとなり、アシュトンはしっかりとディアスの相手をこなせるほど戦闘力を強化させることに成功していた。同じくヘイストの重ねがけを受けたボーマンはクロードとチサトを素早い動きで翻弄しており、じわじわと相手の体力を奪っていく。

「このままだとまずいぞ! レナ、なんとかあいつらの魔法を解除するんだ!」

 そう指示するエルネストは、試合開始以降ずっとノエルの相手に手を焼いていた。風属性紋章術の使い手である彼に対抗しようにも、空気の流れで簡単に軌道が変わってしまう鞭だと相性が悪すぎる。ここを放棄してディアスに加勢しアシュトンの相手を手伝いたいところだが、そうするとノエルを自由にさせてしまうことになり、フェーンやアースクエイクなど強力な術を使われる恐れがある。

 それゆえ決定打が出ないとしても自分は彼の相手をするしかなく、ディアスには自力でアシュトンを倒してもらう必要があった。

「ほら、なんかあっただろ!? 石化とかを解く術が! 名前はわすれてしまったが……」
「エルネストさん。そうしたいのは山々なんです。けど……」
「そーれ、させませんわよ! ファイヤーボルト!」

 しかし、レナが少しでも紋章術を使おうものならすかさずセリーヌから攻撃魔法が飛んでくる。この試合が始ってからというもの、レナは何もできずただただセリーヌから一方的に攻められ続けるままでいた。

「セ、セリーヌさん、卑怯です!」
「あーら、これも作戦のうちですわ。久々にあなたの姿を見た瞬間、ちょうど思いつきまして。悪いですけど、アシュトンのためにもここは引くことはできませんの。ちょっと熱いかもしれませんけど、悪く思わないでくださいね。イラプション!」
「きゃあっ!!」

 地面から飛び上がった噴石の衝撃で、レナは遠くに吹き飛ばされてしまった。それと同時に孤立した彼女を仕留めようとボーマンが猛スピードで走り寄るが、寸でのところでチサトが先にレナの元へと回り込み危機を逃れる。クロードも仲間の危機に気が付き、急いでレナのもとに駆け付けた。

「ええい、いい加減にしろー!」
「焦りで周りが見えてないね、クロード。ブラックセイバー!」

 クロードがボーマンを攻撃しようと背後から剣を振り上げたが、その脇腹にレオンの放ったブラックセイバーが直撃した。暗黒の刃が直撃してよろけるクロードにボーマンは、

「よっしゃ、スキありっ!」

 という掛け声ともにブローを腹部めがけて放つ。

「くっ………」

 なんとかギリギリのところで急所こそ避けることはできたが、クロードはその攻撃を受けて地面に叩きつけられてしまった。

「へへっ、久しぶりだなクロード。しっかしまさか、お前との再会がこの武具大会になるとは、どういう風の吹きまわしか分かんねーな、こりゃ!」
「パパー、かっこいいーっ!」

 ボーマンに小さな女の子の声援が向けられる。観客席の最前列には、リンガから駆けつけたボーマンの妻ニーネと娘エリスの姿があり、ボーマンは試合中にもかかわらず笑顔で手を振り返してそれに応えるのだった。

「うう……こりゃ時間の問題ね……」

 チサトはぎゅっと唇を噛みしめる。このままだと、じきにレナとクロードは倒されてしまうだろう。そうなれば5対3ということとなり、もはや勝負は決してしまうこととなる。打破策を急いで見つけないことには、敗色は濃厚である。

「レナ!」

 焦りと不安が入り混じる中、アシュトンのソードダンスを必死に食い止めていたディアスが言い放った。

「もう一度ディスペルを唱えろ!」
「ええっ!?」

 その言葉にレナは驚く。そしてぶんぶんと首を横に振った。

「駄目よ。セリーヌさんが詠唱の隙をくれないもの……」
「いいから俺の言う通りにしろ。俺がなんとかする!」
「け、けど……」
「早くしろ! このままだと全員やられるぞ!」

 ディアスの声は本気の叫びだとレナは感じた。アシュトンの攻撃はなおも激しさを増しており、レナが見る限りでもディアスがこのまま持ち堪えられるのも長くはない気がした。

 彼が必死で指示をしてくれている。今はそれを信じてみるしかないような気が、不思議とレナの心内に現れてくる。そして彼女は決意を固めたのだった。

「わ……わかった! やってみる!」

 レナはゆっくり大きく息を吐き出した。焦りに身を捉われていては、紋章術も失敗してしまう。しっかり落ち着きを取り戻してから、レナはディアスに言われた通り冷静に詠唱をはじめたのだった。

「ったくレナったら、しつこいですわね!」

 そんなレナに気がついたセリーヌが、すかさず杖を振りかざす。

「サンダーボルト!」

 セリーヌがその言葉を言い終わると同時に、光の線がレナの頭上に現れた。さすがは紋章術のエキスパートであり、簡単な呪紋なら一瞬で繰り出してくる。この速さこそが、レナの詠唱を妨害する生命線だと言えるだろう。

レナは思わず目を瞑る。サンダーボルトの衝撃が頭から流れ込んでくると覚悟した。

 だが、ここで展開は予想外なものへと急変していく。

 どぅん、とレナの耳奥まで雷音が鳴り響いた。来たか、とレナは思ったが、すぐに不思議なことに気がつく。サンダーボルトが落ちたはずなのに、なんと自身は全くダメージを受けていない。

 はっと目を開く。すると目の前には、剣を手にした右腕を高々と掲げるディアスの姿があったのだった。

「デ、ディアス!?」
「レナ……は、はやく唱えるんだ……」

 ディアスが右半身に酷い火傷を負っていることにレナは気がついた。なんとアシュトンと対決していた彼はレナを庇うべく、サンダーボルトの詠唱が終わると同時に彼女の元へと瞬時に移動し、自身の剣を避雷針にして身代わりとなったのだ。

 レナは彼の惨状にショックを受け、反射的にディスペルの詠唱をやめてディアスの回復をしようとした。だがそんな彼女に対し、よろめいて地に伏せてしまったディアスの声が身体に染み込むよう浸透してくる。

「さっさと……アシュトンにディスペルをかけろ……」
「え………」
「悠長にしてる暇はない。急げ……」

 途切れとぎれにそう話すディアスの視線の先には、ディアスの行動に動揺するセリーヌの姿があった。

「ディアスったら、やってくれましたわね……」

 セリーヌが慌ててレナを再攻撃する準備をしようとする。ここで彼女に後れをとっては、ディアスの勇気は無駄になってしまう。気がつけばレナは詠唱中だったディスペルを唱え終えていた。

「……不浄なるものよ、消えよ! ディスペル!」

 つぎの瞬間、アシュトンの体を黄金色の光が包み込んだ。そしてその途端から、素早い動きでディアスを翻弄してきたアシュトンの動きが急に鈍りはじめる。

「あ、あれ……? 体が思うように動かない……」

 正確にはヘイストやグロースもろもろが解かれて本来の運動能力に戻ったのだが、直前までの機敏な動きを当たり前に感じていたアシュトンは錯覚を起こしてしまっていた。車を高速走行した後、平常運転した際にとても遅く感じてしまう現象と似ている。

 ディアスが突如として自分の相手をやめたことで隙が生じた上に、この始末。アシュトンは完全に調子を狂わされてしまっていた。そしてその時、追い討ちをかけるように背後から高速で何かが接近してくることに気がつく。

「おりゃーー! 奥義! 朧車ぁぁーーっ!!」
「うわぁぁーーーーーっ!!」

 アシュトンが気づいた時には既に遅し。体を丸めて回転しながら突進するチサトの神宮流奥義、朧車がアシュトンの体を場外へとあっさり吹き飛ばしてしまったのだった。何度か地面に体を打ちつけられた後、アシュトンは闘技場の隅によろよろと寄りかかる体制になる。

「こ、こんなのひどいや……」

 最後にそう言い残すと、アシュトンはパタリと倒れてしまった。そして審判の手が上がる。これが意味するもの、それはアシュトンの場外失格である。その瞬間、観客席からひときわ大きな歓声がチサトたちへと向けられた。

「レナ……チサト……よくやった………」

 それを見届けるよう、ディアスも審判員から戦闘不能だとジャッジを受けたのだった。最後まで自分の身を顧みず、仲間のために犠牲となったディアスの奇襲。その結果、両チームは主戦力とも言える戦士を一人ずつ失うこととなる。

 これはお互い痛み分けのようにも見えるが、実際は違う。アシュトンとディアスが相打ちしたということで形成は一気に逆転したのだった。これまで型に嵌った戦術に捉われつづけていたボーマンやセリーヌ達のチームは、ここから坂を転げ落ちるかのように崩壊へと向かっていく。

「レナ! 久しぶりに顔見せたと思ったら生意気なことしやがって、ただじゃ済まさないぜ!」

 アシュトンの離脱を受け、すぐさまボーマンが反撃しようと宙高く舞い上がる。狙いはレナだ。

「桜花連げ……って、ぐわっ!!」

 だが放とうとした得意の乱舞技、桜花連撃は不発に終わってしまう。左足で繰り出そうとしたキックが何かに引っかかってしまい、そのまま空中から転び落ちてしまったからだ。

「ふん、そうはさせないさ」

 背後から低い声が聞こえた。ボーマンの足には声の主、エルネストが握る鞭の先端がぐるぐると絡みついていたのだった。

「ちくしょう! なにしやがる!?」
「なに。単なる時間稼ぎさ」
「んなっ……!?」

 鞭を強引に引きちぎろうと足に力を込めたボーマンだったが、何やら感覚がおかしい。ふくらはぎの筋肉が弱々しくなったというか、とにかく力が入らない。

「か、体が重いぞ……」
「残念だったな。お前の負けだボーマン」

 ボーマンの体が、先ほどのアシュトン同様のオーラで覆われる。レナがディスペルを今度はボーマンに向けて唱えたのだった。これで彼にかけられていた強化紋章は全て無効となる。

「でやーーっ!」

 そんなボーマンをここぞとばかりに倒そうと、クロードが鬼の面目で向かってくる。相変わらずボーマンの左足には鞭が絡まっているおかげで自由が効かず、どう足掻いてもこの状況では無駄だと悟った。

「や、やべぇ………」
「くらえ、バーストナックル!!」

 クロードの手から放たれた気功は、そのままボーマンの腹部を直撃する。

「ぐわぁぁ――――っ」

 まるでチンケな物語に出てくる悪役のような断末魔を最後に、ボーマンはその場で気を失ってしまった。観客席からは、そんな父の姿を見た娘のエリスの泣き叫ぶ声が会場全体へと響き渡る。だがここは戦いの場。それを打ち消すくらいの熱狂的な歓声が、今度はクロードに向けられる。

「いいぞーーーっ!」
「ナイスコンビネーション!!」
「さっすが、元準優勝!」

 その声援に、四年前に出場した大会で感じたものと同様の高揚感がクロードに湧き起こる。気がつけばクロード自身にもこの戦いを楽しむくらいの余裕が生まれ、序盤に苦戦していたときとは一転、自然と笑顔が彼の顔へと戻ってきていた。

「へへっ、これで二人目だ!」
「ああ。いい動きだったな、クロード」

 ボーマンに巻きついた鞭を解いたエルネストはクロードにそう言った。

 互いの連携が見事に噛み合っている。もう大勢は決したと判断していた。あとは残った術師たちからの反撃を受けないよう注意しながら倒すだけである。

「おいでなさい! 自然の勇者たち!」

 エルネストの攻撃から逃れられたノエルは、逆転を賭けて大技の詠唱をしていた。たくさんのパンダの群れで敵を一網打尽にする、彼にとって最強技の一つ、「パンダァ」である。

 だが、既にアシュトンとボーマンを倒されたことで武闘派の仲間をノエルは失っている。裏を返せば、詠唱中の自分を保護してくれる味方が居ないということだ。

「させませんっ!」
「うわぁっ……」

 チサトのかかと蹴りによって、そんなノエルの計らいは儚くも散っていった。そしてもともと体力に自信の無いノエルは、この一発でそのままダウンしてしまうのであった。

「ちょ、ちょっとちょっと!?」

 次々と倒されていく仲間たちにセリーヌはただただ呆然とする。たった一度歯車が狂ったところでここまで壊滅的な被害を受けるとは、想定外もいいところだった。気がつけばレオンもエルネストとクロード相手に成すすべもなく倒されてしまっている。

「も、もしかして、残っているのはわたくしだけではなくて………?」
「……もしかしなくっても、そうですよ」

 ぬっ、とセリーヌの背後から現れたレナが、低い声で出し抜けにそう呟いた。振り向いたセリーヌが見たレナの表情は、不気味なほどに満面な笑みで包まれていた。

「レ、レナ……!?」
「セリーヌさん、お久しぶりです! 久しぶりに受けたセリーヌの紋章術、私すっごく熱かったです」
「そ、そうですの!?」
「ええ、ほんっっっとに………これくらいね!」

 レナがぎゅっと握る拳に力を込める。あちこちに火傷を負った彼女からは、とめどなく怒りのオーラが立ち込めている。これからいったい何をされるのかを予想することは、セリーヌにとって自分たちのチームの命運を考えるよりも遙かに簡単なことだった。

「ひいっ……ごめんなさい、レナ………」
「許しませんっ!!」

 両手で必死に降参をアピールするセリーヌなど気にすることなく、レナは会心の一撃を彼女にお見舞いしてやった。そのまま倒れるセリーヌを見下ろしながら、レナは溜まりに溜まってきたフラストレーションがスカッと解放されるのを感じた。パンパンと手のひらをはたくと同時に、実況者の放送が大きな声でアナウンスされる。

「試合終了ーーっ! 5−1でディアスチームの勝利ーーっ!」

 大きな拍手と歓声がレナ達に向けられる。気がつけば大差での圧勝だった。アシュトンたちを全滅させたのに対し、こちらの犠牲はたった一人。だが自ら犠牲となったこの男のおかげで、レナ達はこの快勝を勝ち得ることができたのだった。

「ディアス、ありがとう。あなたのおかげで他の誰も傷つくことなく勝てたわ」

 勝利を喜ぶよりも先に、仲間たちはディアスの元へと集まっていた。

「フェアリーヒール!」

 レナが回復紋章を唱える。アシュトンの剣に加えサンダーボルトによる怪我を受けていたディアスの傷が、たちまち癒されていく。

「すまない……」

 あっという間に全快したディアスは、クロードの手を借りて立ち上がる。チサトはばんばんと何度もディアスの背中を叩き、エルネストは「助かったよ」と一言ねぎらいの声をかけたのだった。

「ディアス……」

 クロードは照れ臭そうに俯きながら、ディアスに声をかけた。

「なんだ、クロード?」
「……………よかったな」
「ふん……」

 ディアスはそれを聞くと不貞腐れたように鼻で返事をし、ぷいっとそっぽを向いてしまう。

「すぐに次の試合が始まる。俺たちも早く控室に戻るぞ」

 既にアシュトンたち5人は、医療班の担架によって医務室へと運び出されていた。その他にも壊れた壁に応急処置が施されたりと、次の試合に向けての準備が急ピッチで行われている。

 勝利に喜ぶのは一旦ここを出てからのほうがいい。そう感じたディアスたち一行は、それぞれの名前がコールされ続ける会場を、手を振りながら後にするのだった。