Star Ocean
Graceful Universe

連載長編小説

10.第一章 第2話

 照りつける太陽がだんだんと西の空へと傾いていく。

 無論、「太陽は必ず西に沈む」と決めたのは地球人なので、他の惑星でこの方角基準を持ち出すのはナンセンスと言えるかもしれない。が、それでもクロードとレナは太陽が沈んでいく「西」へと歩みを進めていた。さきほどレナが見つけた立て札がネステード村を指す方向へと。

「立て札から結構歩いたわよねぇ……?」

「うーん、そろそろ着くと思うんだけどなぁ……?」

 2人は既に山岳地帯を抜け、自然の香り立ち込める森林道に差し掛かっていた。山岳地帯のときにはあちこちに見られた岩肌も今やコケに覆われてしまっている。

「やっぱり村までは結構遠かったみたいね。それにしても……」

 レナがふと考え込む。

「これだけの距離を移動しても、誰一人として道行く人に合わないわね」

 クロードとレナはかなりの時間を歩いたにもかかわらず、誰一人として現地人との接触が無かった。

「まぁ夜明けすぐだから仕方ないよ。もしかしたら、そろそろ誰か通り過ぎるかもしれないよ」

「そうね。人が居れば、どれくらい歩けば村があるのか聞けるのに……」

 レナは相当足に疲労がきているようで、たまに太ももを揉むような仕草も見せていた。

 せめてあとどれくらい頑張れば良いのか、それさえ分かっていれば彼女にとっても精神的にはかなり楽になるだろう。

「さすがに廃道ってわけでもないみたいだし、人が通っていることに間違いはないよ。もうちょっと頑張ろう」

 クロードの足下に続く道脇には木々や草が茂り尽くしているのに対して、道の部分にはほとんど草が生えていない。人間によって頻繁に踏みならされている証拠だ。

「ええそうね、もう少し……」

 レナがそう言いかけたとき、


――――カサカサッ……――――



 どこからともなく発せられた、草と草が擦れるような微かな物音が二人の耳に入った。

 クロードとレナはどちらも俊敏に反応し、互いに背中を預けながら警戒態勢に入る。

「レナ、気をつけて! 何かがこっちに向かってきてる!」

「わかってるわ。あっちの森のほうから来るみたい……」

 2人は道脇の森の奥から何かがこちらに来る、そんな気配を感じた。クロードは剣を鞘から出し、レナは全神経を五感に集中させる。

「……来た!!」

 両手で剣を持つクロードの顔がいっそう険しくなる。

「ブヒ、ブシシシーーー!!!」

 その瞬間、クロードとレナの右側の森林から大きな生き物が勢いよく姿を現したのだった。

 現れたそれは体長2メートルほどの、ブタのような、イノシシのような魔獣だった。突起した鼻は明らかに豚のそれと類似しているが、目つきは鋭く体格はがっしりとしている。

 こちらをものすごい形相で睨みつけてくる。相当興奮しているようだ。

「敵は1匹か。レナ、ここは僕にまかせて!」

 クロードは魔獣に負けじと睨み返しながら剣を向けた。同時にレナが攻撃に巻き込まれないよう、彼女に自分の後ろへと下がるよう指示する。

「クロード………ええ、分かったわ」

 レナは言われた通りさっと身を引くと、ちょっとばかり心配しながらクロードを見守るのであった。

「ブヒヒヒッーーー!!」

 魔獣は頭を突き出し、クロードに向かって突進してきた。落ちている廃木を突き飛ばすほどの勢いで向かってくる。かなりパワフルであり、ぶつかってしまえばただでは済まないだろう。

(意外にスピードがあるな。この星の魔獣は大して強くは無かったはずだったんじゃないのか?)

 惑星ロザリスに関して連邦の資料館では、魔物のレベルはかなり低く穏やかな生態系が形成されていると記してあった。まさか到着して初めに遭遇するのがこれほど凶暴なモンスターになるとはクロードは思いもしなかった。

 だが想定より強い魔獣の出現に少し動揺しながらも、

(けど……この程度、敵じゃないね!)

 クロードはそのまま身を左に逸らし、魔獣の突進を華麗に回避した。

「そこだっ!」

 身を逸らした勢いのまま、自分を通り越していった魔獣の方を振り返り、

「空破斬!!」

 そう叫んで空を斬るかのような剣撃を放った。剣先から発せられた衝撃波が、粉塵や木片を伴って魔獣を襲う。そして“ドウン!”という鈍い音と共に、草木の混じった土ぼこりが辺り一面に舞い上がった。

「……倒したのかしら?」

「いや、まだだ……」

 塵や埃で未だ視界の晴れない森の中。だがクロードは緊張の糸を途切らせてはいなかった。

「ブフ…ブフフフ……」

 魔獣は傷だらけになりながらもこちらを再び睨みつけていた。クロードの空破斬は魔獣の腹部を直撃したようではあるが、まだ四肢は無事のようである。

 傷つきながらもその魔獣は再度突進を仕掛けんばかりに、こちらに勢いよく向かってくる。

(しぶといな。やっぱりこの魔獣、弱くはない)

 クロードの空破斬を食らえば、エクスペルの大抵の魔物はイチコロだった。それほど威力のある技を受けてなお立ち向かってくる体力と気力を兼ね揃えたこの魔獣は、決して地球で見たデータに載っていたようなものではなかった。

 もしや未観測の魔物がいるのでは? クロードはこのときそう疑った。こいつのデータを持ち帰るだけでも、連邦のデータベース増加に寄与したとして多少の手柄にはなるだろう。

 ともかくこいつはエクスペルに生息する魔物に比べるとワンランク上の強さを誇っている。しかし二度目の突進には先程のような破壊力は感じられない。やはり弱っていることは確かである。

(この程度なら避けるまでも無いな。真っ向から斬りつけてトドメを刺してやる)

 そう判断したクロードは剣を魔獣に向かって構える。

「くらえ!!」

 クロードが敵を斬りつけようとした、その時……

「旅の剣士様、おやめください!!」

 突然、何者かの声がした。クロードはとっさに斬りつけるのを止め、魔獣の突進から間一髪で身をかわす。レナも驚いたような表情で声の主の方を振り返った。

 クロード達が来たほうとは逆方向、村があると思われる方角からこちらに向かってくる一人の人物。見たところこの星の中年男性のようだ。彼はずっと自分たちに手を振り、そして何かを叫んでいる。

「ブーシーを殺してはなりません! 旅の方!」

 中年男性はレナ達の側まで来るとこう言った。

「ブーシーって……あの魔物のことですか?」

 レナは傷だらけになりながらもこちらを睨み付けている魔獣を指差した。

「そうです。彼らに逆らってはなりません!」

 男はそう大きな声でクロードの方に向かって言った。

「逆らっちゃダメって言われても……それならどうすりゃいいんですか!?」

「今はひたすら避けてください! とにかく攻撃しないで!」

「わ…わかりました! ……よっと!」

 クロードがブーシーと呼ばれるこの魔獣による3度目の突進を回避しながら、中年男性に向かってそう答えた。怪我をしているとはいえ、こいつの闘志は全く薄れていないようだ。

「私に任せてください」

 男は懐からなにやら小さな袋を取り出した。

「少々臭いますが、我慢していて下さいね」

 そう言うと男は、袋の中から黄色の粉末を取り出し、突進してくるブーシーに向かってその粉をばらまいた。

「うっ……げほっ、げほっ………」

「な、なんて臭いなの……」

 辺り一面の空気が褐色に染まる。何かが腐敗したような、つーんとした粉末の臭いにクロードはつい咳ごみ、レナはぎゅっと鼻をとがらせるのだった。

「強烈だな……これであの魔獣を倒せるのか?」

 とてつもない臭いがある程度引いた後、粉が目に入らないよう目をつぶっていたクロードとレナがおそるおそる再び目を開く。

 すると、なんと魔獣ブーシーは完全に戦意を鎮め、中年男性の前で大人しく座り込んでいたのであった。男は手持ちの薬草でクロードがつけた傷を癒している。これが先ほどまで戦っていた魔獣とは思えない。

 クロードは信じられないような光景を目の当たりにしていた。

「な、何をしたんですか!? まさかさっきの粉の効果で……」

「ええ。その通りです。あの粉にはブーシーの精神を安定させる効果があります」

「すごい。完全に懐いているわ。戦意も完全に消え失せているし」

「ほんとは可愛い奴なんですよ。ほら?」

 男は微笑みながらブーシーの背中をぽんぽんと軽く叩くと、ブーシーは「ブヒ」と機嫌よく鳴いた。そしてすぐさま何かを思い出したかのように、そのまま元来た森へと帰っていったのだった。

「あのブーシーという生き物は、我々の村、ネステードでは神獣として崇められているのです」

 男はそれを見届けながらクロード達に言った。

「そうだったんですか……」

「だから、あの時に私達に殺すなと言ったんですね」

「すみませんでした。全然知らなくて……」

 神獣。それは神の遣いとして、または神そのものとして人々から崇められる存在。それゆえに殺したり傷つけたりという事があっては、それは人々にとって一大事となる。

「いえいえ。……そういえば自己紹介が遅れましたね。私の名前はアルフレッド。ネステードの村で学者をしております」

 アルフレッドと名乗るその男は、身長はクロードと同じくらいだが体つきは少し貧相であった。上半身は骨と筋と皮しか無いのではないかと思わせるぐらい細身であるのに対し、意外と足元はがっしりとしている。

 靴は皮を幾重にも張り合わせた頑丈なつくりになっている、この地方の人はよく歩くのだろう。

 アルフレッドは笑顔で手を差し出した。クロードと同じくらい大きな手をしている。それを受けて二人は慌てて自己紹介を始めるのだった。

「あ、僕はクロードで、あっちはレナと言います。二人旅をしていて、たまたまこの地方に立ち寄ったところで……」

「私がレナです、よろしくお願いします。アルフレッドさん」

 クロードはアルフレッドと握手を交わし、レナもそれに続いた。

「こちらこそ。お会いできて嬉しいです」

 アルフレッドは握手を終えると、先ほど用いた粉と薬草を腰に吊るした袋にしまいこんだ。

「さて。私はこれからネステードに帰りますが、ご一緒にどうでしょう? あなたがたもこちらに向かっておられるようですし、よければ案内いたしますよ」

 アルフレッドはまじまじと2人を見ながらそう言った。普通の娘の格好をしたレナに、農夫の格好をしたクロード。果たしてこの男の目にはそれがどう映ったのかは分からないが、来た方向からして村に向かっていることは明白に感じられただろう。

「ええっ、本当ですか!?」

 これは願っても無い提案だった。見ず知らずの場所で道案内を引き受けてくれる、これだけでも相当ラッキーなことだ。しかも今は二人とも早く村に着きたくて仕方がないくらい疲れている。

「アルフレッドさんがよろしいのなら、ぜひお願いします!」

 レナはようやく村に辿りつく目途がたち、嬉しそうにそう答えた。

「分かりました。では参りましょう、こちらです……」

 アルフレッドは小さく頷くと、村のある方角に向かって足を踏み出した。クロードとレナはやったねと互いに話しながら、アルフレッドの後ろを歩いていった。





「そういえば、クロードさんとレナさんはブーシーの事を知らないとなると、向こうの大陸から渡って来られたのですか?」

 村まで歩いている途中で、不意にアルフレッドが尋ねてきた。クロード達はその返答に困ってしまう。この星の地名については何も知らないからだ。

 が、おおよその推測はできた。この星を宇宙から見たとき、この星には2つの大陸が存在した。アルフレッドの言葉から察するに、「向こうの大陸」とは、自分達が着陸しなかった方の大陸なのだろう。

「ええ、そうなんです。僕たち、こっちの大陸を旅してまして……」

「まさかこんなに凶暴な魔物が居るなんて、思いもしなかったんです!」

 二人は思いつく限りの誤魔化しでなんとかこの場を凌ごうとした。

 それを聞いたアルフレッドはそうですかと相槌をうつと、

「まぁ少し前まではブーシーは人を襲う事など無かったんですがね……」

 と、なにやら悩ましげに話し始めたのだった。

「ブーシーは先ほどご覧いただいたように人懐こい性格が本性でして、あれだけ凶暴になったのはここ最近のことなんです。何か彼らの怒りに触れるようなことでもしてしまったのか、村では大問題となっていまして……」

「それはいつ頃からそのような異変が起こったのですか?」

 この話を聞いたクロードにはある予感がした。

「ほんの2週間ほど前からですよ。それまではこんな事は滅多に起こりませんでした」

 アルフレッドは腕を組みそう答えた。

(ねぇ、クロード?)

(ああ、分かっている……)

 アルフレッドには聞こえないように小声で囁き合うクロードとレナ。二人はアルフレッドの言葉から一つの推論を即座に立てた。

 2週間前。それはランサー少将から伝えられていた、惑星ロザリスに先進技術の存在が確認された時期と一致する。

(この事件、今回の任務と何か関係がある可能性が高いな……)

 クロードは考え込んだ。今回の事件は、その対象である未開惑星保護条約の違反者が一枚絡んでいてもおかしくは無い。二つの事件の時期が一致するなんて、偶然もいいところだからである。

 恐らくは故意にブーシー達を凶暴化させたか、あるいはブーシー達を怒らせる何かをしでかしたか、考えられるのはこのあたりだろう。

「それで、この道には誰も人が居なかったんですね?」

 クロードが考え込んでいる間、レナはアルフレッドとの会話を進めていた。

「そういう事です。あんなに凶暴化したブーシーに我々では太刀打ちできませんし、かと言って殺しては神獣への反逆となります、どうすることもできませんでして……」

「でもそれなら、先程の粉をみんなが使えば……」

 レナの言うとおり、それならさっきの粉で沈静化を計ってもいいのではないか? あの絶大な効果を一目見れば、当然誰もがそう思うところであろう。

「それはそうなんですが、実は……」

 アルフレッドは何か訳ありのような話をしようとしたが、急に言葉を止めた。

「……あっ、村が見えてきましたよ!」

 その言葉通り、クロード達の前方、ずっと向こうのほうに、ぽつぽつと家が並ぶのが見えてきた。考え込んでいたクロードも一旦思考を停止して、前方に見える村を即座に確認しようとその目を凝らすのだった。





 前方に現れたのは山林の中の小高い丘に作られた村だった。家の数はざっと見て200~300軒。人口はおおよそ1000人くらいといったところだろうか。

 石造りや木造りの家からは煙突が立ち並び、そこからは煙がもうもうとあがっている。そろそろ朝食の時間だからだろう。地球で調べてきた通り、中世の村の風景がそこには広がっていた。

 建物に生々しい傷跡などもない。ここは永きに渡って戦乱の無い、平和な村なようだった。

 3人はアーチ状の村の入り口をくぐった。村の周囲は柵で覆われているわけでもないので、この入口は飾りにすぎないのだろう。だが歩き疲れたクロードとレナはこれを通過することで、ようやく人里に到着することができたことを実感するのだった。

「我々の村、ネステードに到着です。宿屋はそこの突き当たりにあります。どうかごゆっくりしていってください」
「はい、ありがとうございます!」

 クロードとレナは口を揃えてそう返事をした。

「いえいえ、どういたしまして。それでは、私はこれにて……」

 アルフレッドはそう言い残すと、村の奥の方へと立ち去っていった。クロードとレナは村の入り口に取り残された形となる。

「なんかさらっと帰って行ったわね……」

 レナがそれを見送りながら呟いた。アルフレッドがそそくさと帰って行ってしまったことに少々戸惑っているようだ。

「結局大切なことを聞き出せなかったね。なんでブーシーに黄色い粉を使わなかったのか……」

「そうよね。あれを使えばすぐにブーシーたちと仲良くできると思ったのだけど……」

 最も聞きたいところに話が差し掛かったところで村に着いてしまったため、クロードたちは事件の実態を完全に把握することが出来なかった。

「まぁ、色々と事情があるのよ。ここまで案内してもらっただけでも感謝しなきゃ!」

「うん。アルフレッドさんに会えて本当によかったよ」

 道案内に加え、有力な情報。アルフレッドに偶然会った事は、クロード達にとって非常に大きなことであった。日暮れまで時間が押している中、彼に会わなければ今立っている村の入り口に夕暮れまでに辿り着くことができたであろうか?

「ねぇ見てクロード。朝焼けがすっごい綺麗!」

 レナは村の入り口の方を振り返り、空を眺めていた。東の空にはまさに昇らんとしている橙色の太陽、そして山々の隙間から差し込む赤い光が谷型の地形を照らしていた。

「ほんとだ、すごいね、真っ赤だよ。こんな朝日見たことないや」

「地球じゃもっと白いわよね? 日の出って」

 まるでオレンジ色のペンキを空からこぼしたかのように、山、岩、木、家、その全てが橙色に染まっている。村が高台に位置しているおかげで、それら全てがこの場所から見渡すことが出来る。

 その雄大な景色に、クロードはついつい見とれてしまうのだった。

「私達の宇宙船、あの辺りにあるのかしら?」

 レナはずっと向こうの方にある岩地を指差した。

「そうだね。ずいぶん遠くから来たんだな……」

 クロードはそう言うと、うーんと背中を伸ばし、大きなあくびを一つするのだった。

「どうしたの、レナ?」

「い、いえ……」

 クロードが自分のほうを見るレナに声をかけると、彼女は少し顔を俯かせたのだった。

「えっと……私達、二人きりでこんなに遠くまで来ちゃったのね」

「ああ。本当に遠く感じるね、地球からも」

「けど地球からだと、実際はそうでもないのよね?」

「うーん、どうだろ。ワープで来たからちょっと間隔マヒしてるかもしれないな」

 クロードは空を再び見上げた。同じセクターθ(シータ)内にあるのだから、銀河単位で言うと短距離にあたる地球と惑星ロザリスだが、光年単位にすると数万はあると考えられる。

 今、山脈の向こうで輝く恒星ロザリスの光が地球で観測されることは、おそらくクロードが生きている間には叶わないことなのだろう。

 ここは地球との物理的距離もさることながら、環境という点においても地球とは程遠い面がある。手のつけられていない自然が広がる場所など、地球には存在しない。

 とうとう任務にやって来た。そういった実感がここで初めて二人の心の中に湧き上がるのだった。

「ねぇクロード、ちょっと思ったんだけど……」

 レナが突然クスクスと笑い出す。クロードは不思議そうにそれを見つめる。

「あのね、ブーシーって……ブタとイノシシを合体させたような名前じゃない?」

 レナはそう言うと、さらにケラケラと笑い声を上げるのだった。

「あ、ああ。言われてみれば……」

「でしょでしょ? 絶対そうよ!」

「あはははは……」

 それがクロードにとってそこまで面白かった訳ではないが、何故かレナにつられて笑ってしまった。この星には果たしてブタやイノシシが居るのかどうかは分からないが、名前の由来を考えるとそんな気がしなくも無い。

 ふとクロードは目下の大地にブーシーが居ないか、少し必死に探してみた。彼女がそれを見たら、もっと笑ってくれそうな気がした。彼女の笑顔をもっと見てみたかった。

「久しぶりだな。こういうの……」

「そうね……」

 朝日が昇る丘の上で二人は腰をおろし、しばらくそのまま時を過ごすのだった。


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