Star Ocean
Graceful Universe

連載長編小説

74.第六章 第1話


~ 1440年 9月15日 ~


 人類をはじめとした高等生物が文明を発達させる際、必ず通るであろう過程。それは同族を階級ごとに区分し、身分というものを作ることだ。こうすることで強き者が支配する層となり、そしてそれ以外の者はひたすらに服従することで、社会は成立し続けていく。

 共通して見られるのは、階級“ごと”に分けるという卑怯な規則である。一部の支配層と大勢の服従層では、当然その体制に不満が出てもおかしくはない。そしてもし反乱でも起ころうものならば、それは支配層にとって収集のつかない大変な事態になり得る。だからそれを事前に防ぐため、支配層は大衆の中でもランクを分けるということを思いつくのだ。

 大衆の中でも、最も下のランク。よく“奴隷”や“下民”“愚民”などと称される彼らが、大多数の一般市民の不満を緩和する。「自分たちよりもまだ下が居る」と思うことで、人は錯覚してしまうのだ。まさしく人類の汚い部分の表れだが、逆に言えばこういった制度があるからこそ、文明は効率的に発展してきた。これに対して善し悪しを決めつけることはナンセンスなのかもしれない。

 だが人間の心には良心が残っていることも事実だった。ときに、こういった文明には“マスカレイド”、別名“仮面舞踏会”なるものが存在する。これは出場者全員が仮装することでその身分を隠し、全ての人間が同等な条件で楽しむために生み出された娯楽。やはり心の底では、誰もがみな等しく仲良く過ごしたいと願っている。そしてそういった理想が具現化したものが仮面舞踏会であると、いまの倫理学ではそう捕えられている。



 そしてそれはここキーサイド王国でも、古くから伝統的に続けられてきた。王城から歩いてすぐの所にある、パルテア花壇に彩られた平屋建ての宮殿。青い屋根に黄色い壁の建物は、その奥へ向かって壁双子円柱が半円を描いて並ぶ列柱廊を従えている。しかし人々が集まるのは、エントランスホールの一箇所である。寓意的な絵が使用された漆喰彫刻が内壁一面に施された、ここは舞踏会専用の会場だった。

 今晩もまた、多くの貴族や王族がその宮殿へと馬車でやってくる。もう青暗い空、赤色の西十字星が雲を薄い紅色に染める下、それがたとえどんなに短い距離であっても、彼らは姿を隠すよう細心の注意を払いながら宮殿に登場する。有志で定員数だけ集められた一般市民に、高貴な身分であることを悟られないようにするためだ。マスカレイドは、こうして今日もまたこの場所で取り開かれる。

「ほら、はやく降りなさい」

「はーい、お母様」

 その馬車の一つから、無邪気な女の子とその母親の二人が降りてきた。親子ともども蝶の形を模したバタフライマスクを顔に付け、その素顔を隠している。母親のほうは群青色のイブニングドレスに、胸元には大きな黒ダイヤのネックレス。そして女の子のほうは赤色の子供用ボールドレスを振りつかせながら、手にはおもちゃのステッキを握りしめている。

 スタスタと手をつないで宮殿へと向かうそんな親子の表情は、綺羅びやかなバタフライマスクに隠されていて分からない。出迎えと思われるタキシード姿の男たちは、次々と彼らに頭を下げていく。

「ねえお母様。お父上は?」

 歩きながらにして、女の子は母親にそう問いかけた。

「あの方なら先に到着しています」

「あら、そうなの?」

「ええ。ほら、わたくしたちも遅れないように、早く行きますわよ」

 そう質問に答えた夫人。しかしここで何かを思い出したように、再び娘のほうへと顔を向けた。

「……そうそう。ここに来る前にしたお約束、ちゃんと覚えているかしら?」

それを聞いた女の子は、朗らかな声で返事をした。

「うん、覚えてる! ここではわたしの名前、言っちゃダメなんでしょ?」

「いい子ね。そうよ、絶対に。そしてたとえ、ここにいる誰かの名前が分かっても、それを言ってはいけませんよ」
「はーい!」

 先ほどの返事とは違い、女の子は素直な口調で微笑んだ。そして彼女は、まるで自分が魔法使いに変身したかのように、手にしていたステッキでコツコツと地面を叩きながら前へ前へと進んでいく。そして母親も、娘に手を引っ張られるかのよう宮殿へと急ぐのであった。

 それはよく頻繁に、けれどこのような機会にしか見られない、舞踏会前の甘い親子のやり取りであった。





 大きな鏡が取り付けられたステージから鳴り響く管弦楽曲は、音をよく反射する宮殿内の空気を支配する。けれどもそれは、決して耳につくものではない。あくまで舞踏会に参加した人々の脳内の中、ほんの僅かな領域に留まるほどに主張しない、そんな加減で演奏することができるのも王国随一の楽団が成せる業だった。

 山国の夜は静かで、そして落ち着いたもの。しかしこの宮殿には数多ものキャンドルがシャンデリアに並べられ、屋根に取り付けられた牛の目型の窓からは月光がきらきらと反射しながら室内へと差し込んでいる。

 仮面舞踏会は、こうした非現実を創り出すことで参加者を酔わせる。一日中鳴り止むことのない音楽と共に、人々は身分を忘れて踊り、喋り、飲み、そして笑う。

「あら?」

 そんな中、紫色のバタフライマスクを身につける少女は、ふと自分と同年代くらいの少年を見つけ、ふとそんな声を漏らした。そしてバイキングメットに白色の無地仮面という、なんとも滑稽な格好をした彼のもとへと、少女は駆け足で近づいていった。

「あなた、もしかしてヘイデンかしら?」

「なっ………!?」

 そう尋ねられたヘイデンという名の少年は、不意を突かれたかのようにそう言葉を発した。

「やっぱり。声と仕草でわかっちゃうわ!」

「お前、ここでは名前を言っちゃいけないんだぞ! バレて怒られても知らないからな!」

「あら、そう言えばそうだったわね……」

 そう言うと少女は、ゆるくパーマのかかったセミロングの髪を右手でかぎ上げながら舌を出した。

「でも、わたしの質問に素直に答えるあんたもあんただけどね。ぜんぜん隠せていないわよ」

「う……うるさい!」

「ほらほら、そんなに怒んないの。せっかくの楽しいマスカレイドが台無しになっちゃう」

「ったく、せっかくキーサイドまで来てやったってのに、生意気なやつだな、お前は……」

「うーん、そうね。わたしは別にあんたに会いたいなんて、これっぽっちも思わなかったけれど……」

「………」

 少女が驕慢な態度でそう言うと、ヘイデンは悔しげな様子で黙り込んだ。仮面のせいで表情は分からないが、それでも彼の心境は不思議と少女へと伝わったようだ。少し気まずさを感じながらも、少女は間をもたせるために何とか話題を捻り出そうとしていた。

「……で、そういえば去年生まれたっていうあんたの弟。その子はまだここには来れないの?」

「……ああ、あいつか」

 ヘイデンは素っ気なく答えた。

「まだ小さすぎるからって、母様が……」

「ふーん。そりゃそうよね……」

「なんだ? もしかしてお前、俺より弟に興味があるのか?」

「ううん。ただ、どんだけあんたに似てるのかなって?」

「……仮面してたら分からないだろ?」

「あら、たしかに! ほんっと、ついつい忘れそうになるわ…………」

 少女はそう言うと、「はぁあ……」とわざとらしい溜め息をついた。

「どの人もみんなそう。仮面がどうとか、姿隠せとか。わたしもう、なんだかうんざりしちゃいそう」

「仕方ないだろ? これはそういう会だって、みんなそう言うんだから」

「そう言うから、わたしだってお母様の前では素直に従っているフリしてるわ」

「だったらそれでもいいじゃないか、別に。ほら、いろんな仮面した奴がいて面白いだろ?」

「そうね。そうだけれど、でも………」

 少女はとつぜん歩き始め、そしててくてくと肩越しにヘイデンを通り過ぎていく。

「なんだかもう飽きちゃった。違うのは仮面だけで、やることはいつも一緒。つまんないわ………」

 そう吐き捨て、少女は手にしたステッキを揺らしながら大扉のほうへと向かっていった。ヘイデンはそんな彼女に振り向くことはなく、ぎゅっと拳を握りしめたままバイキングメットを垂らす。彼女のきつい香水の残り香だけが、立ち尽くすヘイデンのもとに残された。

 白塗りの天井に施された金色の植物文様装飾が、きらきらと欺くような輝きを放つ。何度も聞いたことのあるような音楽は流れ続け、それに合わせて大人たちは踊り続けている。彼らは現実の身分を忘れ、仮面をつけた相手と踊り続けていた。

 子供どうしの戯言など、この場においては何の物語も紡ぐことはなかった。





 扉から宮殿の外に出た少女は、9月の少し生冷えた夜風が吹き鳴らす花壇に腰を降ろした。関係者は全員が屋内にいるため、ここには入り口を見張る憲兵くらいしか居なかった。たまに人が外に出てくるが、そのほとんどはタバコ休憩。仮面の上から一服していくと、すぐにまた建物の中に戻っていく。

 そう。仮面をつけているから、たとえ誰が外に出てきたのかも分からない。それは少女に関しても同じことが言えた。たとえ彼女が身分の高い人間の娘だとしても、それに気づかれる可能性はほとんど無いといってもよかった。

 少女はそこでずっと星を見ていた。花壇には咲いたばかりのサルビアが風に揺られている。その縁で少女は思い悩むように星空を見上げていた。

 天文学者たちは口を揃えてこう言う。「この大地を中心に、その周りを星が回っている。それが私たちを照らしているのだ」と。少女はこの言葉にずっと疑問を抱いていた。「いったい、誰が照らしてくれているんだろう?」と。

 照らしてくれている人は、自分を、いや、この世界全体を見渡せることになる。それはとても面白いことなのではないのだろうか。城という閉ざされた世界でほとんどの世界を過ごしてきた少女にとって、それはとても憧れを抱け、そして同時にとても恐ろしく感じられることでもあった。

 そのとき、微かな話し声が風に乗せられ、少女の耳へと入ってきた。

「これが報酬だ」

 それは仮面をつけた少女にとって、聞いたことのない声だった。どうしてもその声が気になった。今の自分の空っぽの心にとっては、どんな些細なことでも刺激的に思われた。

「ほら、お前の仕事はもう終わりだ。とっとと帰った帰った……」

 高圧的な口調で放たれるその声は宮殿の横、列柱廊の向こうから聞こえてきたものだった。少女は薄暗い垣根の横を気づかれないように移動し、無心でその場所へと向かう。昔から何度もこっそり探検したことがあるので、特に迷うことはなかった。

 彼女が現場にたどり着くと同時に、バタンと扉の閉まる音がした。そこには自分と同い年くらいの少年が一人、列柱廊の下で立ちすくんでいた。何やら手に持った紙切れのようなものを数え、それをポケットにしまい込んでいる。

「何をしているの?」

 少女はつい、その少年に背後から声をかけてしまった。

「えっ……!?」

 見すぼらしい格好をした少年は、思わず後ろを振り返ってそう声を漏らした。

「あなたはここで何をしているの? 今日ここに来ているのに、仮面つけてないじゃない」

「そ、それは………」

「それに服も。あなた、舞踏会での身だしなみも知らないの?」

「え? えっ………?」

 少女が何を聞いても、少年は戸惑うだけだった。ここまで挙動不審な人間など見たことがない。少なくとも自分が今まで出会ってきた人たちは、みな自信に溢れているかのような話し方をしてきたからだ。少女は不思議に思い、ふとこんなことを尋ねてしまう。

「あなた、名前は?」

 先ほどヘイデンから改めて釘を刺された、この舞踏会でのタブー。しかし今回はそうと分かりながらも、少女はあえて聞いた。

「ぼ、ぼく……?」

「他に誰がいるっていうのよ?」

「あ、ああ………」

 少年はたじろぎながら、ずっと俯いていた額を少女のほうへと向けた。

「ぼくの名前は、ネロっていうんだ……」

「へぇー………」

「…………」

 少女は黙ってネロと名乗った少年の顔を見つめた。事情はよく分からないが、とても怯えたような様子は相変わらずだった。

「まぁいいわ、ネロ。あんたいったい、こんなところで何をしていたの?」

 とりあえず少女はそう訊ねてみた。

「そ、その………」

「………」

「しょ、しょ…………」

「………」

「しょくりょう……の………」

「………もーっ! ぐだぐだしてないで、はやく答えてよね! あたしだってヒマじゃないんだからさ!」

「は、はいっ!! ごめんなさいっ!!」

 痺れを切らした少女の声に、ネロは慌ててそう返事をした。

「ぼくは舞踏会の食料をここに運んだんだ」

「あら、それはご苦労様」

「う、うん。それでね。そしたらもう仕事は終わりだから、はやく帰れって………」

 それを聞いた少女は「ふーん」と声を鳴らしながら、まじまじとネロの姿を見つめた。自分がこの舞踏会で口にしてきたディナーの数々は、実はこの男の子が運んできた食材によって作られてきたということを知った。大人の事情などよく分からないが、このネロが正式な参加者ではないことも雰囲気から察することができた。

 だがここで少女あることを思いつく。思いつく、というよりも、不思議な情感が彼女の心に浮かんだというほうが正しいのかもしれない。それはこのネロという少年に対する、幼くも無垢な興味だった。

「その食材って、いったいどこから運んできたの?」

「えっ……?」

「お城で食べてきたご飯がどこから来てるのかって、今までぜんぜん考えたことなかったの。できれば教えてほしいなって思って……」

「ぼ、ぼくは中央市場で用意されていたものをここに運んだだけだから、よくわかんない………」

「ふーん? その中央市場って、なに?」

「え? えっと、それは………なんて説明したらいいのかな………?」

「それにネロは中央ってさっき言ったけど、中央以外にもその市場っていうのはあるの?」

 少女から質問責めにあうネロ。彼女は彼が話した内容に関して全くというほど無知であるらしく、あまりうまく会話は進まなかった。

 それでもネロは必死に、自分がここまで食料を運んだ経緯を語った。自分は貧民層で暮らしていること。既に両親が他界しているため、こういった肉体労働で生計を立てなければいけないこと。請けた仕事が何の役に立つのかさっぱり分からないが、とりあえず言われた通りに荷物を運べばなけなしのお金を手に入れることができるということ。だからまさか、自分が仮面舞踏会の食材を運んでいただなんて思いもしなかっということ。ここに自分が居るという事態に至った経緯を、一から全て話した。

 そしてそんなネロの話を、少女は飽きること無く相槌を打ち続けていたのであった。ネロという少年はなかなか頭が良いらしく、無知な彼女にも分かるよう丁寧な補足を説明のなかに凝らしていた。そのおかげで少女は、ネロのいきさつをおおよそ理解するに至ることができた。

「え、えっと……」

 やがて少女からの質問が途切れ、自分のこともおおよそ語り尽くしたネロは困ったような表情を浮かべた。

「これで満足……したかな?」

「そうね………」

 それを受けた少女は、くすっとその口元に笑みを浮かべた。

「ちょっと待ってて。いいもの取ってくるから………」

 そして彼女はそう言い残すと、足早に垣根の奥へと走り去っていったのだった。

「ちょ、ちょっと………?」

 ぽつりと一人その場に取り残されたネロ。自分勝手な女の子だなと不満に思いながら、仕方なく言われたとおり彼女の帰りを待つことにした。他の大人に見つかるとまずいので、そっと物陰に身を隠す。すると何故かネロの心にはいつの間にか、少女がここに戻ってくることを心から待ち遠しく思う感情がこみ上げていたのであった。





「はい! これ着けて!」

「ちょ、ちょっと、これってさ………?」

 十数分後、ミントが両手で抱えるようにして持ち帰ってきたもの。それは左半分が赤色、右半分が白色に塗られた一枚の仮面と、まだら模様の衣装だった。

「なんだか大道芸人……みたいだね?」

 それを見たネロは率直な感想を述べる。

「これ、いったいどこから取ってきたの?」

「化粧室の衣装棚で宮廷道化師さんの服が余っていたから、ちょっと借りてきただけよ」

 少女はそう言いながら、てきぱきとその衣装を広げてネロにそれを手渡した。

「ほら、はやく!」

「うわっ……!」

 少し抵抗しようとするネロなどお構いなしに、少女は無理やり服を着せようとした。

「な、なんでこれをぼくが着なきゃんだよ!?」

「なんでって……決まってるじゃない!!」

 少女は口を尖らせる。

「一緒に舞踏会に行くためよ!」

「ぶ、舞踏会って、今ここでやってる、この………」

「それ意外に何があるっていうのよ? どうせ時間あるでしょ、ネロ?」

 ぽかーんとするネロに、少女は下から衣装のボタンを止めていく。見すぼらしい布地の肌着一枚だったネロは、まるでイベントごとなどによくいる風船売りが縮んだような、戯けた子供へと姿を変えてった。

「あたし決めた。今日は一日、あなたにつきあってあげる」

「えっ……えっ………?」

「だって、中の人と踊っても退屈なだけだし」

 そして最後に、道化師の仮面をネロの頭に被せる。大人用のそれは少しサイズが大きかったため、簡単にすっぽりネロの頭にはまってくれた。

「あら、なかなかいいじゃない」

「そ、そんな。身分違いだよ……」

「大丈夫! この舞踏会は身分なんか関係ないから!」

「でも、もしバレたらどうするんだよ!?」

「平気よ。そんなの誰も気づかないわ! みんな自分のことに夢中だもの……」

「う………そ、そんなものなの?」

「もう。男の子がそんな意気地なしでどうするのよ!?」

 たじろぐネロの腕を、少女は強い口調でそう言いながら掴んだ。

「あたしにもっと、いろんな話を聞かせてよ!」

 ぐいぐいと腕を引っ張り、無理矢理にでも彼女はネロを舞踏会へと連れて行こうとする。道化師の衣装に皺を寄せながら、ネロも必死に抵抗していた。

「でも、やっぱり怖いよ。僕そんなところ行ったことないし……」

「ならなおさらじゃない!? 舞踏会、まだ見たこともないんでしょ?」

「うん。だから………」

「見たこともないものを見れる、チャンスなんだよ!?」

「へっ……!?」

 一瞬、ネロの抵抗する力が弱まった。少女はそのまま彼を引きずるように、宮殿の脇道へと足を踏み出す。

「あんたは……あたしよりも……………」

 彼女は聞こえないくらい小さな声でそう呟いた。

「あの………いま、何か言った?」

「……何も…………」

「そ、そうなんだ。空耳だったよ、ごめん………」

「………………」

 そのまま二人の少年少女、仮面を身にまとった小さな道化師は、蝶の手によって誘われるように列柱廊の傍を黙って歩いていくのだった。静かに手を引く少女と、引かれゆく少年。お互いに幼い気持ちが通じ合ったのか、少女の握る力が少し弱められた。

 これから彼らは、身分というラベルを包み隠して一晩中踊り続ける。少女の願いを受け入れた賢い少年は、もう振り向くことはなかった。けれども彼は手を握られている感触が嬉しくて、これまで自分が感じたこともないような暖かさが伝わってきて、それをこのまま少女から手放されないよう、手応えが失われない程度の抵抗をつづけていた。花壇で揺れるサルビアの花は、そんな二人を静かに見送っていた。





~ 1445年 12月6日 ~


 時は流れ、ある雪降る冬の朝。まだ日も昇ろうとすらしていない、薄暗く静かな朝。

 冷えたキーサイド城の廊下を、ラムは今日も准将としての仕事を行うべく公務室へと向かっていた。

 彼は30代半ばという若さで将軍目前のところまで出世するなど、軍の大きな期待を背負う出世株だった。それは決して贔屓目に見られていたわけではなく、彼がこれまで残した実績を客観的に評価して与えられた信頼。向上心の高い彼は今日もこうして、誰よりも早く持ち場に就くのが日課だった。

 だが職場へと続く階段を昇ろうとした瞬間、彼は只ならぬ気配を感じ取る。荘厳で凍てつくキーサイド城の空間には似つかない、澱んだ空気。

「………妙だな……………」

 こういった嗅覚に、ラムは自信があった。まさかとは思うが、念のため不穏な空気のする場所へと足を運ぼうと、階段へ向けた靴先を廊下へと戻した。嫌な気配は最も奥、国王の一人娘であるミント姫の居室から漂っていた。

 部屋の前まで来ると、その悪感はさらに増してラムの脳内へと押し寄せてきた。常に居るはずである護身兵もいない。おそらくトイレか何かで席を外しているのだろうか。

 一准将が勝手に姫君の部屋に入ることなど、本来なら到底許されないこと。しかし、たとえ自分の直感が杞憂だったとしても、「護身の兵がいないから不審に思った」という言い訳ができると判断したラムは、そっと部屋の扉を開け、隙間から中の様子を伺うことにしたのだった。

「………!?」

 ラムの予感は当たっていた。部屋の中ではミント姫が、一匹の浮遊する死神のような化物に胸ぐらを掴まれていた。彼女は必死にもがいているが、じりじりと喉元が締め付けられているため声が出せないでいる。

「姫!!」

 ラムは反射的に部屋の中へ飛び込むと、腰に据えていた剣で死神を一閃した。すると意外にも、その死神はあっさりと真っ二つに分断される。特に断末魔や血しぶきなどを上げることも無いまま、手にかけていたミント姫をドサリと落とした。

「姫! 姫! ご無事ですか?」

 すぐさまラムはミント姫の元へと駆け寄る。

「ううっ………けほっ、けほっ…………」

 さぞ息苦しかったのか、ミント姫は床の上で咳を繰り返しながら噎せこんでいた。命に別状がないことを知り、ラムはほっと安心する。

「よかった。間に合ったようで………」

「ラム………あれを……………」

 しかし、ミント姫は苦しみを抑えるよう、部屋の隅にあるベッドを震える手で指さした。ラムがその方向に目を向けると、そこには紫色に渦巻く穴のようなものが、空間の中にぽっかりと開いていた。そして先ほど倒したはずの死神は、体を二分したままその中へと逃げこんでゆく。

「な、なんだあれは………?」

 呆気に取られている間に、その穴は収束するかのように萎んでしまった。ベッドの上には何もなかったかのように静まりかえり、ただ壁掛け時計が針を打つ音だけがカチ、カチと部屋に鳴り響いていた。

「姫様、いったい…………?」

 ラムの頭は混乱したままだが、様子から見るにどうやら無事に事無きを得たらしい。ラムはここで何が起こっていたのか、静かな声でミント姫に訊ねた。

「ごめんなさい、ラム…………」

「ごめんなさい?」

 被害者であるミントがなぜ謝るのか、ラムは不思議に思った。

「なぜあなたが謝るのですか?」

「ごめんなさい。だから、今のことは忘れてください………」

 ミント姫はそう言うと、しゅんと頭を下げた。だがラムは納得いかない。姫は何か重大な隠し事をしている。彼女のこの様子だと誰の目から見ても明らかだ。

「忘れろ、と言われましても……。お父上やお母上はこのことをご存知なのですか?」

「………いいえ……………」

「ならば、このまま放置しておくわけにもいきません。現に姫様は殺されかけたんですよ!?」

「お願いします。内緒にしていてください。お父様たちに心配をかけたくないんです……」

「そんなこと言われましても……これはあなただけの問題ではありません!」

「そこをどうか………」

 何度説得しても、ミント姫はただひたすら「今の事件のことは黙っていてほしい」の一点張りだった。当然、国を守るという立場にあるラムにしてみれば呑み込めるような話ではない。ミント姫が殺されてしまうだけでも大事。さらにいきなり魔物が謎の空間から現れたということは、キーサイド王国そのものが危険に晒されてしまう可能性だってある。

「なりません!」

「…………」

「話してください、姫様!」

「……………」

 それでもミント姫はラムの呼びかけに口を開くことなく、ただ懇願するような表情で彼の顔を見つめていた。このままではキリがないなと判断したラムは、少し条件を緩和して交渉することを思いついた。

「……わかりました。そこまでおっしゃられるのなら、今回のことは他言しないことにします」

 いま最優先すべきは、ここで何が起こっていたのかをきちんと聞くこと。とりあえず誰にも言わないと姫に約束することで、なんとかして口を割ってもらえないかどうかラムは試みた。

「…………」

 それを聞いたミント姫はラムから視線を外し、考え込むような素振りを見せた。ラムは期待するように次の言葉を待つ。すると次に彼女の口から発せられたのは、ラムの約束を確認するような文言だった。

「ほんとうに………誰にも言わないと………そう約束してくれますか?」

「ええ、約束します! このことは私と姫様、二人だけの秘密にすると!」

 自分を信じてくれと訴えるよう、ラムは真顔でそう言った。すると彼女は不安を押し殺しながらも、少し心を開いたように、ぽつりぽつりと話を始めるのだった。

「実は、三年くらい前から、その、なんて言うべきか分かりませんけれど、不思議な力みたいなものに目覚めてしまったみたいで……」

「不思議な力、ですか………?」

「はい………」

 ベッドに腰掛けながらそう話すミント姫は、俯いたまま一度だけこくりと頷いた。

「私がこの城から外に出たい。そういう気持ちが強くなると、決まって今のように不思議な空間への扉が目の前に現れるのです。そこには澱んだ紫色の空と黄土色の大地が延々と広がっていて、私はその扉が開くたび、その場所で遊んでいました………」

「………それは、先ほど私も見た、あの渦を巻いた不思議な穴のことですか?」

「………はい」

 ミント姫はまた大きく頷いた。今度はラムの顔をしっかりと両眼で捉えていた。

「そこには誰もいませんでした。広い世界で私ただ一人。それが楽しくて、でも同時に誰かに知られるのが怖くて………」

「それで、その不思議な力を使い、誰にも言えない一人遊びを続けていたんですか……?」

「そうです。ラムは実際見ていましたものね?」

 もし実際にあのような光景を目にしていなければ、ラムはこの馬鹿げた話を信じることもなかっただろう。しかし百聞は一見にしかず。今のラムにとってはどんな話でも、彼女が話せばそれが真実として受け止めることができた。

 真剣に話を聞いてくれているのが嬉しかったのか、ミント姫は次第に声色が上がってくる。これまで溜め込んでいた秘密を解き放つかのよう、摩訶不思議な話はさらに続いていく。

「今朝、私は夢を見ました………」

「夢………?」

「ええ………」

「……どのような夢ですか?」

「それが………」

 ここでミント姫は表情を一変させ、困ったようにそう呟いた。

「ぜんぜん思い出せないんです。何か懐かしい何かが私を引っ張っていくような……」

「はい……」

「ただ、楽しい夢でなかったことは確かです」

「なるほど……」

「とても魘(うな)されていましたから」

「そうですか………」

 彼女は悪夢を見たと言う。それが何か事件に関係しているのだろうか。ラムはできるだけ話を広げられるよう、相槌を打つことに徹していた。

「私は突然目が覚めました。それもなぜだか覚えてはいないのですが、まるで何かに呼び戻されるかのように。すると………」

「……あの異空間への扉が開いていたと言うわけですか…………」

 ラムがそう言葉を紡ぐと、ミント姫は細い声で「はい……」と返事をした。

「……しかし、そうだとすればあの化け物はいったい? 姫様の話では、異空間には誰もいないのでは?」

「ええ、これまではずっとそうでした………」

「しかし、あの魔物はまるで、姫様の言う異世界から来たみたいでしたよね?」

 ラムが腑に落ちないようにそう聞くと、ミント姫は両手で口元を覆ってしまった。

「……あんなことは初めてでした。私は、私は……………」

「姫様………」

「ラム。私はどうすればよいのでしょう? いつか私はまたあのような魔物を呼び寄せてしまうのでしょうか? そのときはどうすれば………」

 ミント姫はそう言うと、崩れるように泣き落ちてしまった。口を覆っていた掌は目元すべてを包み、そこから涙の筋が滴り落ちる。

 今までよかれと思ってやってきた遊びが、まさかここまで大変なことになってしまうとは、彼女は思ってもいなかったのだろう。いきなり突きつけられた針のような状況に、ただただ彼女は泪を流すことしかできなくなってしまっていた。

 ラムは困ってしまった。ミント姫は今の王の長女である。王位は年の離れた弟が継ぐことになっていたが、それでも彼女は両親から溺愛され育ってきたことは誰もが認めることだった。それが一つ間違えれば国に甚大な被害を出すという、これほどショックな真実が彼女に秘められていたということ。偶然かつ唐突すぎるきっかけで、ラムはそれを知ることになってしまったのだ。

 どうすれば、この問題を乗りきれるのか。そう考えようとしたとき、彼の頭には一つの考えがすんなりと浮かんだ。

「私に良い考えがあります、姫様………」

「えっ………?」

「聞いてくださりますか?」

 それを聞いたミント姫は顔を上げ、縋(すが)るような眼差しでラムの顔を見た。

「その能力を訓練し、制御できるようにすればどうでしょうか?」

 あまりにすぐ案が思いついた。そんな自分がラムは少し怖くなった。しかし彼女は今の自分を頼ってくれている。そんなことが少し心地よくも思えていた。

「その能力が暴発する前に、あなたがそれを支配してしまうのです。そうすれば、あなたは一生その力を隠し通すことができるでしょう」

「………えっと……………」

「もちろん、私と姫様の二人で、誰にも知られないように訓練するのです。私がついていれば、魔物が現れても危険が及ぶことはございません」

 驚くほどにすらすらと言葉が湧き上がってくる。ラムはその勢いそのままに、ミント姫にその判断を迫っていく。

「姫様。方法はこれしかありません。その能力がいったい何なのか。どういった経緯でそれを手に入れてしまったのか。全くもってそれは分かりませんが、会得しまったそのお力と一生付き合っていかなければならないことは事実です」

「………」

「さあ。ご決断を!」

 いつの間にか、ラムは異空間の扉を開く能力を“手に入れたもの”と表現するようになっていた。

「ラム………私はあなたを信じてもよいのですか?」

 期待と不安が入り混じったように、ミント姫は小さくそう訊ねた。ぴたりと揃えられていた彼女の脚に力が加わり、ベッドのシーツに皺が寄った。

「大丈夫です。私はこの国に忠誠を誓った身。これがキーサイドにとって、そして私達にとって最善の策なのですから………」

 今のラムにとって、これ以上の理由はなかった。これが国のため、そして秘密という錘を抱えてしまった自分たちの進むべき道なのだと。

「……わかりました。私はこの力を制御できるよう、あなたと訓練することにいたします………」

 ミント姫は寝着の袖で自分の涙を拭うと、心を決めたようにそう返事をした。ラムと共に自分に向き合っていくと、彼女は決意したのだった。

 ラムは黙って何度も頷いた。自分と姫のあいだに約束を取り付けられたことに満足いった様子だった。

「護衛兵を私の直属の者に変えておきます。こうすれば、あなたは夜にいくらでも部屋を抜け出すことができます。また図書館の地下には、ほとんど使われていない古書部屋があると聞きます。そこで毎日、異空間への入り口を開く訓練をしましょう」

「ええ。申し訳ございません。お任せいたしますわ………」

「いえいえ………」

 自分のためにここまでしてくれることを申し訳なく思うミント姫の両手を、ラムは優しく包み込むように自分の掌で覆いくるんだ。

「何度も申しますように、これが私達、ひいては国の未来のためなのですから……」

 ラムは穏やかな笑顔で最後にただ一言、そう言ったのだった。窓の外の世界では夜が明け、ちらついていた雪もいつの間にか止んでいた。空気中の氷に太陽の光が反射し、まるで天に向かう光の柱のようなものが遠くの山々の向こうから姿を現していた。





~ 1449年 4月21日 ~


「姫様。この衣装はどうなさいます?」

「ああ。それは捨ててください。もう小さすぎて、私は着ることができませんから」

「はい、わかりました!」

 城内に明るいメイドの声と、それに答える女性の声が順に響いた。そしてすぐにバタバタと、慌ただしい足音が鳴る。18歳になったミント姫は、明々後日に控えたヘイデン王子との結婚式を目前にして引越の準備に追われていた。

「もうすぐ、この部屋ともお別れなのね………」

 今まで暮らしてきたキーサイド城。年頃の少女が青春を過ごした部屋も、明日でお別れすることになる。片付けが進み、タンスや鏡台などあらゆる家具が無くなっていく。

 部屋が立方体に近づけば近づくほど、ミント姫の心には寂しさが募るが、だからといって時間は待ってはくれない。幼い頃からよく知っている隣国フーラルのヘイデン王子から熱烈なアプローチが、現国王である父へと送られていた。そして父がその要請を承諾した以上、彼女にそれを拒む権利などどこにもなかった。

 しかし、ミント姫は別にそれが嫌というわけではなかった。こう言ってはなんだが、ヘイデン王子は巷で有名な美男子、若者言葉でいう“イケメン”という部類に属しており、またその性格も自分はよく知っている。政略結婚で全く知らない殿方の嫁になる姫君の話は溢れるくらいによく聞くが、自分は彼女らに比べれば相当に恵まれているのだろうとミント姫は思う。

 それに現在は極めて友好関係にあるキーサイドとフーラル両国。首都どうしもそう距離が離れているわけではないので、帰省しようと思えばいつでも帰ることができる。故郷を捨てるような、そういう哀愁じみた感情は今のミント姫にはあまりなかった。

 彼女はどちらかと言えば、いろいろな思い出の詰まったこの部屋とのお別れのほうが寂しかった。いい思い出ばかりではない。今も自分を苦しめている能力に目覚めた場所もまた、この部屋なのである。

「私はこの力を隠し続ける。絶対に…………」

 あの冬のこと。目が覚めるとそこには化け物が召喚されていた。その日のことを思い出しながら、ミント姫はそう独り言を呟いた。そして窓のふちに手をつき、春の香り漂い込む外の世界を眺める。

 あくまで自分はこれからもずっと、“ふつうのお姫様”として振る舞い続ける。平和な日常を享受するためには、恐ろしいこの自分の能力を墓に持って行くまで秘密にしなければならないのだ。そのためにミント姫はほとんど毎夜、今は軍師へと出世したラムと共に召喚術の修行をした。その甲斐もあり、意思に背いて異空間への扉が現れることは一切なくなっていた。彼女は完全に召喚能力を自分のものにすることに成功したのだった。

「ラムには感謝の言葉が見つかりませんわ………」

 今こうして自分が自分でいることができるのも軍師ラムのおかげだと、ミント姫はずっとそう自覚していた。そしてヘイデン王子との結婚を強く推してくれたのもラムだという話も聞く。彼がここまで面倒を見てくれたおかげで、彼女はここまで生きてくることができたのである。

 こうした経緯から、これからは今までたくさん世話になったキーサイド城の人たち、そして新しい夫となるヘイデン王子をはじめとしたフーラル共和国の人たちに向け、溢れんばかりに感謝し続けながら生きていこうと、ミント姫はそう心に誓いこんでいたのだった。

「さて。あまりゆっくりしている時間もありませんよね。はやく荷造りの続きを行いましょう……」

 そう言ってミント姫は、まだ整理のできていない私物の山のほうへと目をやった。ある程度のところまで引っ越しの準備は進んだとはいえ、まだまだ部屋から持ち出すものをまとめる必要がある。

 そのとき、彼女は山のなかからあるものを発見し、途端に目を凝らす。そこには紫色のバタフライマスクが一着、たくさんの思い出の品々の中で無造作に紛れ込んでいたのだった。

「まぁ、あれは…………?」

 彼女は山を崩さないよう、慎重にそのマスクを取り出す。それはかつて幼い頃、仮面舞踏会に向かうときによく着けていたものだった。懐かしいものが出てきたことを嬉しく思ったのか、様々な角度からそれを眺めながらミント姫は自然に頬を緩ませる。

「昔はマスカレイドもあまり好きではなかったですね。特にこれを着けていた頃なんて、嫌で嫌で仕方なかったわ………」

 そう呟きながらも、彼女はこのときある少年の姿が、まるでフラッシュバックされるかのよう久々に思い出された。遠い記憶の彼方で眠っていたある日の思い出が、朧げにミント姫の脳裏で復活する。

「そう言えば、彼に会ったあの日からですね。外の世界が楽しそうに見えて、自由に憧れて、そして今の能力に目覚めて………」

 彼の名前はもう思い出せない。舞踏会宮殿の庭先で偶然出会い、一日中語り明かしたあの少年は、ミント姫の価値観に大きな影響を与えた。それまで城の中が世界の全てであった少女は、その外に広がる自由な場所を求めるようになっていた。

 人生とは妥協しつづけること。大人になって自信の立場をわきまえた今のミント姫は、そういうものだと割り切って生きている。しかし一方では理性で抑え続けてきた、本当に自分の望んでいた願いが異空間の召喚能力として具現化してしまっている。その引き金を引いたのは、紛れも無くあの少年に違いなかった。彼と出会わなければ、彼女は自分の能力で悩み続けることもなかったであろう。

 これはもう、今の自分に必要なものではない。そう思ったミント姫は表情を曇らせながら、そのマスクを不要品の袋へと躊躇することなく入れた。それは幼いころの無垢な願いが蘇らないよう、自分自身にけじめをつける意味合いもあった。思い出はあくまで一つの思い出なのだ。

「ちょっと、勿体なかったかしら………?」

 もう一度微笑みながら、ミント姫は荷物整理の作業を再開させた。三日後に迫った、新たな人生への出発点へと向けて………