連載長編小説
67.第五章 第15話
幸いにも自分たちがケルベロスと戦っている場面を直接見た市民はほとんど居なかったようで、ディアスとチサトは周囲の視線に苦しむことなくレストランで夕食を済ませることができた。もちろん支払いは全て、先ほど「奢る」とチサトに約束したディアス持ちである。
一日のほとんどを牢獄で無駄にしてしまったが、今みたく夜となってしまっては、これ以上の活動も自粛せざるを得ない。昨日同様、二人は適当な宿屋を見つけると、そこで疲れを取ることにしたのだった。
そして迎えた次の日の朝。新聞ではケルベロスとの戦闘が大々的に報道されていたが、相変わらずミント姫誘拐の件に関しては一切触れられていなかった。
被害を受けて崩れ落ちた現場を横目にしながら、ディアスとチサトはハルマの街を後にしたのだった。
「とりあえず、これを追いかけていきましょ!」
ハルマの街から、とりあえず適当に北へ進路を取った二人。そんな彼らの目には、地面にくっきりと残された何かの痕跡が映った。
コートを纏ったチサトが指さす地面。それはいわゆる凍土と呼ばれるものであり、焦茶色に変色した雑草が土壌を覆い尽くしている。だがそこには鋭く掘り抉られたような、そんな不自然な形跡が一定周期で地の果てへと続いていたのだった。
「これは……ケルベロスの足跡?」
「ええ、大きさからしても間違いなさそうね」
「ああ。地質が硬くて幸いしたな」
二人の意見が一致する。昨日目にしたケルベロスの鋭い爪をこの穴にはめ込めば、きっとぴったり一致するに違いないだろう。つまり、この足跡を追跡すれば、ケルベロスにハルマの街を襲わせた張本人の元に辿り着けるだろうという算段である。
「……もうやり残したことはないな?」
「ええ。なんかラムの軍隊がノースフォールの門に向かっていったみたいだけど、クロードくんたちならあんな奴ら難なく蹴散らして、すぐにハルマに到着するに違いないし。もし何かあったらみんなに任せるとして、私たちは常に最前線を切り開かなくっちゃ!」
ディアスの問いかけに、チサトは意気揚揚と答えた。
「それに、もっともっとたくさんの記事ネタを収集しなくちゃね。働く女は大変なんだから!」
チサトはこの星に派遣された理由が「事件の取材」だということを忘れてはいけなかった。とりあえず牢獄脱出という一つのネタは確保できたが、編集長が期待するのはもっと大いなる成果、つまり任務完結までのストーリーだ。
「じゃ、レッツゴー!!」
「ふっ……いちいち元気な奴だな………」
そう拳を掲げて歩きはじめるチサトに、ディアスは苦笑しながらも後をついてくのであった。
さて、チサトたちが順当にキーサイド王国で起こった事件の足取りを追う中、本隊であるクロードたちも遅れながらにしてようやくフーラル共和国とキーサイド王国と国境、ノースフォールの門に到達したのであった。
あまり封鎖を長引かせ、国民に不信感を募らせるのを防ぐためか、今は通行制限も完全に解除され、多くの旅人がここを普通に行き来していた。ただしキーサイド王国へ入国する人間には誓約書にサインをさせている。ミント姫が誘拐されたことは絶対に喋るなという釘刺しであり、もし他言した場合は死刑に処するとまで書いてある。それを除けば、この関所の風景はいたって平和そのものだった。
もともとこの両国には親密な交流があったのか国境とは名ばかりであり、通行時に課せられる質問(出国の理由など)でクロードたちが引っ掛かることはなかった。そのかわり、手荷物の検査はなかなか厳しい。関税のチェックや危険物の輸送を防ぐことが目的なのだろう。
そのため、剣というあからさまな刃物を有しているクロードはかなり多くの問いかけを受けたのだったが、説得の甲斐あり魔物対策に必要なものと認めさせることができた。こうしてなんとか彼も無事に検問を突破できたのだったが、問題はボーマンである。
「この液体は何ですか?」
「ちっ、それは………」
すぐ傍らをごうごうと滝が流れ落ちる、ひんやりとした石造りの通路。その先には洞窟の入り口が見え、そこでクロード、レナ、レオン、セリーヌの4人はずっとボーマンの検問が終わるのを待っている。まさかこんな目にあうとは、ボーマンは思いもしていなかった。
「ボーマン・ジーンさん。あなたは毒薬といい爆弾といい、危険物を所持しすぎていますね。テロリストの疑いをかけられても仕方ありませんよ……」
「だから、ちげーって言ってんだよ! これは魔物と戦うための武器! 護身用! その証拠に傷薬とかもたくさん持ってるだろ?」
「しかし規則は規則です。これらの薬品が何なのか、検査の結果が出るまで出国は許可できません」
「くっそー、なんでそうなるんだよ!?」
検査官の言葉に、ボーマンは苛立ったように頭を抱えこんだ。彼の所持していた劇物はマンドレイクやトリカブトをはじめとした、この星には存在しない動植物から調合したものである。検査の結果がすぐに出るようなシロモノではない。
「仕方ねぇな。強行突破しても門を閉じられちまうだけだろうし、あいつらだけでも先に行っといてもらうしかねぇか………」
チラリとボーマンが目を向けたその先には、洞窟の上部に設置されている重厚な鋼鉄製の門があった。今は複数の鎖により繋ぎ止められているが、あれだけの重さがあれば張力が解かれた瞬間に洞窟の入り口を閉ざしてしまうだろう。そうなればキーサイド王国へ入国できなくなるばかりか、逃げ道の無い状態でここの兵士たちと戦わなければならなくなる。
「おい、クロード!」
ボーマンが手を振りながらクロードに大きな声をかける。
「悪いが先に行っておいてくれ。おそらく俺はここからしばらく動けねぇ」
「ボーマンさん……。けど、さすがに一人は危険な気が……」
「なーに、心配すんな。俺一人で後から追いついてやっからよ」
「そんな。それならせめてレオンだけでもここに残しますよ」
パーティのバランスを考えれば、接近戦タイプのクロード一人に術師3人(レナ・セリーヌ・レオン)は過剰戦力でバランスも悪い。この中から一人を残してもさほど問題はなく、むしろそのほうがボーマンの安全のためにもなるだろう。
「ボーマンったら、仕方ないなぁ……」
レオンは面倒臭そうに澄まし顔をしながら、てくてくとクロード達の元を離れていった。
「ここはぼくとボーマンが残るから、クロードたちは先に行っててよ」
「いいのか? レオン?」
「別に。それに大人数で任務に来たのは、こういうときに戦力を分散させるためでしょ?」
「あ、ああ。すまないな………」
現状、優先するべきことはチサト達との合流。それを考えればいた仕方のない選択だった。
「それじゃ、先に行かせてもらうよ。気を付けて」
「うん、クロードたちもね」
クロードとレオンはそう言葉を交わし、ここでさらにパーティを分断することにしたのだった。
ちょうどそのとき、何やら慌ただしげな一人の兵士がキーサイド王国側の洞窟からやって来た。彼は真っすぐ出国検査官のもとへと直行すると、ひそひそ話で何かを伝えた。するとそれを聞いた検査官は、急いで手元のノートをパラパラと見返した。
「ん? なんだろう?」
なにやら彼らはノートを眺めながら、しきりにクロードたちにむけてちらちらと視線を差し向けている。その眼差しからは、とても好意的な印象は感じられない。
そんな不穏なやりとりが衛兵たちの間で続けられやがていたが、あるとき二人は何かを決定したかのよう互いにうんと頷く。そしてキーサイド王国からやって来た兵士は検閲所の脇にある扉の中に入っていき、検査官のほうはクロードの元へとゆっくり近づいてきたのであった。
「すみません、お名前のほうを確認したいのですが……?」
検査官は柔らかな物腰でクロードにそう訊いてきた。
「え、名前ですか? えっと、クロードです。クロード・C・ケニー。先ほど出国簿にサインしたと思いますが………」
「クロードさん……ですね?」
そう自分の名前を反復する兵士に、クロードは何かまずいことでもあるのかなと、嫌な予感を巡らせるのであった。兵士は再度クロードの顔を見ると、後ろを振り向いてばっと手を上げた。
クロードの嫌な予感は、見事に命中することとなる。
突然、軋むような金属音とともに洞窟の門が勢いよく降りてきた。その真下にいたレナとセリーヌは悲鳴を上げながらそれを避ける。クロードも彼女らの叫びに気が付き、とっさに声を漏らす。
「なっ、なんだ!?」
「お前がクロードだな!?」
ズズンと重たい音を立て、キーサイド王国へと向かう洞窟は鋼鉄の壁によって完全に遮られてしまった。そして呼ばれた自分の声に、クロードはフーラル共和国側、すなわち検査官が並んでいた場所を振り返った。
「ミント姫誘拐犯の容疑者として、これから貴様らを捕らえさせてもらう!」
すると既に、いったいどこから湧いてきたのか20人ほどのフーラル軍兵士たちが、自分たちの逃げ道を塞ぐかのよう通路に大挙していたのだった。
「なっ、どういうことだ?」
「貴様らがミント姫を誘拐した賊者なのだろう。すでにキーサイド王国軍師、ラム殿から報告は受けている」
「そ、そんなこと僕たちは知らないぞ!?」
「とぼけても無駄だ! かかれ!」
その先頭にいた兵士が掛け声を上げると、フーラル兵たちは一斉にクロードたちに向けて襲いかかってきたのだった。
「おいおい、なんだよこれは!?」
ボーマンは彼らに追われるよう、急いでクロードの元へと駆け寄る。レオン、レナ、セリーヌら3人も同様にクロードの傍に集まり、5人で熱り立つフーラル兵たちを相手にしなければならなかった。
「こうなったら、今は一旦戻るしかありませんわね」
「ええ、門が閉じちゃったし、まずはここを脱出しないと!」
セリーヌとレナの言うとおり、キーサイド王国へ向かうことは不可能となってしまった。なんとかここを強行突破し、彼らを巻きつつフーラル共和国側へと退却するしか選択肢はなかった。
「ま、これくらいの数だったらなんとかなるよ」
レオンはそう言うと武器である書物を取り出し、紋章術の詠唱を開始した。確かに20人程度の一般兵ならばクロード達の敵ではないだろう。だが、そんな彼らの会話を聞いていたフーラル兵はニヤリと笑みを浮かべた。
「ははは、そんな大口叩けるのもここまでだ!」
兵士はそう言うと、脇にいる兵士に「開けろ」という合図の言葉を送った。すると先ほど閉じられたばかりの門が再び、今度は鎖に引きずり上げられるかのようゆっくりと開いていく。あちこちで重たいネジが回転するような音のなか、門の向こうから現れたのは……
「げげっ………」
「な、なんなのこの数は!?」
ボーマンとレナが喫驚の声を上げた。それもそのはずである。なんと洞窟の中には数えきらないくらい大勢のキーサイド兵たちがびっしりと整列しており、クロードたちに剣を向けていたのだった。
「キーサイド王国のラム軍師も、ありがたいことに大勢の援軍を送ってくださった。さあ皆の者、この者どもをひっとらえよ!」
その一言のもと、地鳴りのような喚声が滝の音をかき消した。洞窟を埋め尽くしていたキーサイド兵たちは、一斉にクロードたち目がけて突撃してくる。そしてその反対側では、数十人のフーラル兵が待ち構えている。
「や、やばいんじゃありませんのー!?」
何の身の覚えもないクロードたちは、なぜか両国軍から挟みうちを食らってしまったのだった。前からキーサイド兵、後ろからフーラル兵。通路の両脇から飛び降りたとしても、滝壺に真っ逆さまであり命の保証はないだろう。
「と、とにかく逃げよう!」
とりあえず数の少なそうなところを潜り抜けるしか打開策はない。そう判断したクロード達はキーサイド兵たちに背後を見せながら、20人ほどのフーラル兵のほうめがけて一斉に突き進んでいくのだった。
「な、なんとか抜け出せたな……」
「え、ええ。そうですわね………」
キーサイド軍とフーラル軍に奇襲された一行は、クロードとボーマンとセリーヌが前線でフーラル兵たちの相手をしつつ、その一方で背後から襲い来るキーサイド軍に対してはレナとレオンが紋章術をぶつけることで時間稼ぎをした。
意外にもここで有効だったのはレオンの紋章術“ノア”だった。滝という水源が近くにあったため水属性の紋章術は地の利を得たのか、詠唱から発動までがとても早かった。さらに大洪水を巻き起こして敵を流し去るという術の特性上、相手の兵士をあまり傷つけることなく洞窟へと押し戻すことができた。
そしてその間にクロードらがフーラル兵を一人ずつ薙ぎ倒していったおかげで、5人はなんとか砦から外に脱出することができた。
「く、くそっ! あいつらめちゃくちゃ強いぞ………」
「無理だ、勝てやしない……」
彼らの圧倒的な戦闘力の前に、だんだんと相手側の兵士からはそんな弱音も聞こえ始める。形勢では不利だったものの、個々の自力は雲泥の差があった。
それでも苦しい戦いだったことに変わりはない。紋章術が使えず、杖でフーラル兵に応戦していたセリーヌは腕に切り傷を負わされていた。
「セリーヌさん、大丈夫ですか?」
「ええ。それにしてもわたくしったら、まったくツイてないですわ。ラクールで肩を怪我したばかりだというのに、また傷をつけられるなんて……」
「ま、たまにはそんなときもありますよ。いま回復しますから、しばらくじっとしていてくださいね……」
砦の入り口を抜けたところでレナはそう言うと、セリーヌの傷口に両指を軽くかざした。
「キュアライト!」
その指先から緑色の淡い光が溢れ出し、セリーヌの傷口に纏わりつく。するとたちまちセリーヌの肌に刻まれていた赤い線は、跡一つ残らず綺麗に消え去ったのであった。
「ありがと、レナ」
「いえいえ、気にしないでください」
「……でも、どうせならフェアリーヒールくらいが良かったですわね……」
「贅沢言わないでください! 魔力は節約しなきゃいけないんですから!」
セリーヌとレナがそんな言葉を交わしつつも、一行はさらに砦を降りていく。背後からは相変わらずキーサイド兵が追いかけてきているため、ゆっくり立ち止まっている時間など無いのだ。
目の前には湖にかかる吊り橋が見える。ここを超えると道は一気に開ける。そうすればさすがに追い詰められることはないだろう。
急いでこの細い橋を抜けるべく、クロードたちはその片端へとたどり着いた。あとはここを渡るだけである。
「……止まれ!」
だがその瞬間、周囲には大きな声が辺り一面に響いたのだった。クロードたちはついその言葉に反応してしまい、ぴたりと体が止まってしまう。
「これ以上、我がフーラル領にキーサイド兵を踏み入れさせるわけにはいかない」
続けてそんな言葉がクロードたちに向けられる。
「なっ……なんだよあれは!?」
橋の向こう側。何もないはずだった湖畔には、兵隊の大軍が陣を構えていたのだった。その軍旗に記されているのは、結婚披露宴でも掲げられていた巨大な黒い鳥の紋章。それは彼らがフーラル共和国の国軍であることを意味していた。
「貴様らキーサイド軍が侵略してくるとはな……」
「お、俺達はキーサイド軍じゃねぇぞ!」
対峙するフーラル軍に向けて、ボーマンは怒りまかせにそう叫んだ。
「俺たちはただここを通りかかった旅人だ!」
「ははっ、この状況でそんなこと信じてもらえるとでも思ったか?」
「な、なにっ……?」
ボーマンがそう答えて後ろを振り返ると、そこにはノースフォールの砦から溢れ出てくるキーサイド兵の行列があった。
「あの逆三角形の紋章、ラム直属の精鋭騎士団だな。やはり奴が謀っていたのか……」
そんなとき、白馬に身を揺らせる一人の青年が陣地の奥より現れる。
「お、お前は……」
それは先程から自分たちに向けて声を発していた張本人。そしてその正体に、クロードたちの間には衝撃が走ったのだった。
「お前はヘイデン王子!?」
そう。フーラル共和国の大軍の中心に君臨していたのは、先日の結婚式でミント姫の隣に居た、金髪の花婿。あれだけ派手に登場してくれれば、忘れるはずもない。それはフーラル共和国の第一王子であり、王位継承者でもあるヘイデン王子だった。
「ラム! 貴様はこの私を裏切っただけではなく、愛するミント姫を私から奪っていった。さらにそれだけではない。ここノースフォールの門に大軍を送り込み、我が国を侵略しようとしているではないか。これはもはや国家間の信頼を裏切る大問題である。よって今から我らフーラル共和国は正義の名の下、貴国キーサイド王国に宣戦布告をするものとする!」
ヘイデン王子は軍配を掲げながら、クロードたち含めキーサイド兵に向けて高々とそう宣言したのだった。その言葉を受けたキーサイド兵たちは慌てた様子でノースフォールの門入り口付近をたむろしていたが、一部の兵士からは応戦せんとする声も聞こえてきている。
「ちょ、ちょっと! どういうことなの? 宣戦布告って!?」
「……っていうか、ラムって誰?」
レナとレオンは前と後ろを交互に振り向きながら、焦ったように声を荒げた。他の仲間たちもこの異常な状況に頭がついていけていない様子だ。
「わからない。……けれどこの状況、ヘイデン王子からすると彼の言う通りだ。ミント姫がキーサイド王国に連れていかれた挙げ句、自国に兵士を送り込まれているんだから……」
そんな中ただ一人、クロードは今起こっていることを冷静にそう考察する。だが緊迫した雰囲気のなか、一行がそれほど悠長に構えている暇などなかった。
「いけーっ!!」
「うおおおおおーーーーっ!!!」
次の瞬間、ヘイデン王子の声とキーサイド兵の雄叫びが一斉にこの山岳地帯に鳴り響いた。それは戦いの狼煙が上げられたことを意味し、両軍一斉に突撃せんとクロードたちがいる裾野に向かってなだれ込んでくる。
「ちっ、俺たちが居る場所、よく見りゃあいつらの中間地点じゃねえか!? こりゃ間違いなくここが戦場になるぜ。どうする、クロード?」
そんな光景を目の当たりにしたボーマンは、舌を打ちながらクロードに判断を仰いだ。
「……とりあえず、僕達は中立だ。自分たちの身を守ることだけを考えよう。あっちの滝に身を隠すよ」
クロードは全員にそう指示をすると、遠くの滝の裏のほうを指さした。ノースフォールの門の脇に流れ落ちている、激流の先。そこに身を潜ませながらこの戦場を静観するしか、もはや彼らに取れる行動はなかった。さすがにこれだけ多くの兵士に入り乱れられては、自分たちだけでこの戦いを止めるのは不可能。それどころか下手に戦争へ介入してしまうと、未開惑星保護条約に抵触する恐れまででてくるからだ。
フーラル共和国とキーサイド王国。この二国はミント姫誘拐にいくつもの偶然が重なった形で、これまでの友好関係が一瞬で崩れ去った。そればかりか遺恨が納まることはなく、誤解の末に引き起こされた戦争の火蓋が今ここで切り落とされることになってしまったのであった。
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