夜と言うにはまだ早いような時間帯。確かに日は沈んでしまっているが、かといって真っ暗闇なわけでもない。ここは青暗くて少し涼しい、アーリアの村のはずれ。
レジスの家でディアスと遭遇したクロードたち一行。当のディアス本人はクロード一人をアーリアの村はずれに呼び出した。
他の仲間たちをレジスの家に残し、クロードはディアスに呼び出された場所を一人で訪れていた。すると髪をなびかせ仁王立ちするディアスが、遠くのほうでぽつりと佇む姿が見えた。
ディアスのほうもクロードが来たことに気づくと、自分について来いと手振りで合図を送った。クロードがそれに頷くと、ディアスは何も言わずに野原の奥へと歩き始めた。
「で、なんだ? 話ってのは?」
ディアスの後をつけながらクロードは尋ねた。少し湿っているその地面を踏みしめながら感じる張り詰めた空気が、クロードにひしひしと緊張感を与え続ける。
「……………」
「ディアス。何か訳があるんだろ? こんな所に呼び出して」
「……………」
ディアスは何も喋らない。
「どうしたんだよ? 久々に会ったかと思えば……」
「……………」
まるで動く銅像のように、何も言わずただただ歩いていくディアス。そんな彼の態度にクロードは少し苛立ち始めていた。
「なんだよ、またレナの事か?」
「……………」
兼ねてよりディアスとの口論の火種となったレナの名を口にする。だがそれでもディアスは動じなかった。
「……………」
頑固なディアスにこれ以上あれこれ言っても、返ってくる答えはどうせ一緒だろう。何をたくらんでいるのかは分からないが、ここはとりあえず黙って彼の後をついていくことにした。
しばらくすると村の一番端、ただっ広い平原に二人は着いた。虫や蛙の鳴き声が辺りに響く以外は何も聞こえない。この場所に踏み入れると、ディアスはそれまで止めることのなかった足を静止させた。
クロードもディアスに合わせて歩みを止め、辺りをきょろきょろと見回した。特にこれと言って変わったものはない普通の草原だ。何故ディアスはここで足を止めたのだろうか?
「ここに何かあるのか?」
クロードはそうディアスに尋ねた。
「お前をここに連れてきたのは何かを見せるためではない」
ここに来て初めて口を開いたディアス。未だクロードのほうを振り返ることなく、ただしれっとそう言い放った。
「………クロード、久々に手合わせ願いたい」
「……は?」
「二度は言わないぞ?」
「……手合わせって、今すぐこの場所でか?」
「ああ、そうだ……」
突然申しだされた手合わせ。それは即ちディアスとクロードが剣を交える事を意味する。ディアスが突然そんなことを言い出した事に少し驚いたクロードだったが、こんな広い場所に連れて来させられた時点で、少し嫌な予感はしていた。
「そうか、久しぶりに帰ってきた僕の姿を見て、また戦いたくなったんだな?」
「……それもある」
そう言って、右手ですっと鞘から大剣を抜き出すディアス。普段から念入りに手入れされているのであろう。月光が鏡に映し出されたかのように刃の表面から反射され、鋭くクロードの方へと向かってくる。
その突き刺さるような美しさにぞくっとするクロード。それはこの男、ディアスの威圧感を見事に体現していたのだった。
「俺は今回、全力でお前に向かっていく。覚悟しておけよ」
「………そうか」
クロードはそう言うと、ディアスと同じように剣を抜いた。彼のものに比べればずいぶんみすぼらしい一品だが、この状況では武器を選ぶ余裕など無い。
というより、そんな事はこの場では関係なかった。強さとは武器を選ばない。彼との戦いではそれ以上にもっと大切なことがある。気持ちで負けてはいけないということだ。
「お前がその気なら、僕も全力でお前をボコボコにしてやるよ」
「ふん、相変わらず威勢だけは大したものだ」
剣を構えるクロード。そんな彼にディアスはようやく振り向き顔を見せる。そして剣をクロードの方に向けると、左手を柄に添えたのだった。
「何度も言うが、容赦はせんぞ」
「ああ、分かってる」
「ふっ……」
今まで少し険しい顔つきだったディアスの顔がほんの少し緩む。対峙する二人の間を、一筋の風が通り抜けた。
その直後、ガギィンと剣と剣が激しくぶつかり合う音が周囲に鳴り響くのだった。
――――ギィン!――――
――――ガギィン!――――
「はぁ……はぁ……」
「どうした? もう息を荒めているようだが?」
とても規則的とは言えないが、その周期は確実に短くなっていく、剣と剣がぶつかり合う音。二人の剣士の真剣勝負。しかし実力は拮抗しているとは言えなかった。
「くっ……」
息一つ乱さずに間髪なく攻撃を加えてくるディアス。その動きに無駄は一切無い。クロードはそれを受けるだけで精一杯だった。
ディアスの剣激を寸手のところで止めているという非常に危険な状況。頭の中で考える戦いの理屈と、実際にそれを行う身体の動きが、全くといって良いほどに噛み合わない。クロードは思い通りにならない自身に対するもどかしさを隠せずにいた。
「くそっ……」
「少し弱くなったか、クロード?」
一旦身を引き、クロードとの距離を開けてからディアスが言い放つ。
「……まぁ、しばらく戦っていなかったからな」
ふぅ、ふぅと息を切らせながらクロードはそう答えた。
「ふん。言い訳は聞かんぞ」
突如、開いていた二人の距離が急に狭まる。ディアスが神速の如く、クロードとの間合いを詰めたからだ。それと同時に、ディアスは剣をクロードへと振り落とす。
――――ガゥン……!――――
鈍い音と共に、クロードはその一撃を間一髪で受け止めた。だが、ギリギリと音を立てて押し寄せてくるディアスの剣が、ぷるぷる震えるクロードの両腕に重圧を加える。
さっきまでとは剣圧が明らかに違った。クロードは歯を食いしばりながら、必至にそれに耐える。
「剣術の技量が落ちたことくらい、久々にお前に会った時から既に気づいてた。俺は相手の実力くらい、戦わずとも一目みれば分かる……」
険しい表情で重みに耐えるクロードに、ディアスはさらに言葉を続けた。
「さっき言ったな。お前に聞きたい事があると……」
――――キィン…――――
ディアスは大きく剣をなぎ払い、クロードをはじき飛ばした
「うわっ!」
背中から地面に叩きつけられ、そのままザザッと引きずられるクロード。腕にいくらかの擦り傷ができ、赤黒い染みが服の上に滲んできた。
「お前はこうして、自分の弱さゆえに相手に完敗するときにどんなことを思う?」
仰向けに倒れていた状態からクロードが起き上がろうとしたが、その時には既に彼の喉元へと、ディアスの長剣の鋒(きっさき)が突きつけられていた。
「どうもこうも……」
その突き刺すようなディアスの視線に対し、クロードは真っ直ぐに顔を向けたままそう答える。
「それはそれで仕方の無いことだろ? ただ自分が弱くて相手が強かったという、その事実を受け入れるだけさ」
「……自分が憎くならないか?」
「それは確かに自分自身に責任はある。でも憎くは思わない。精一杯戦った結果なのであればな」
「……もしお前が、自分のせいでレナを守り切れなかったとしても、そう言い切れる自信はあるか?」
「!? ディアス……?」
剣を握るディアスの手が少し強くなるのをクロードは感じた。
「お前、もしかしてセシルのこと……?」
「………」
しばしの間沈黙が流れる。そしてディアスはクロードに向けていた剣を音もなく静かに引っ込め、そっと鞘へと戻した。
「俺は妹を殺されてから人が変わってしまった。前にレナがお前に話した通りにな」
いつの間にこんなに時間が経ったのだろうか、二人がここに来たときはまだ薄暗かったのに今は完全な夜となっていた。地球に比べれば明かりの少ないエクスペルの夜だが、月光があちこちに散らばる岩々に反射するこの場所では、それほど暗さを感じることはなかった。
「その時は自分が憎かった。そしてそんな自分を抑えるため、俺はただひたすらに強さを追い求めていた……」
夜空を無表情で眺めながら、クロードに背を向けてディアスが語る。
「そんな時、俺はお前達に出会った」
「ああ。はじめはマーズの村だったな」
そう。彼との初対面はマーズの村。子供達が誘拐された事件の時だ。
クロードはゆっくりと体を起こすと、片膝に腕を乗せる体制で地面へ腰を下ろした。
「あれからお前たちと行動を共にして、立ちはだかる強敵どもに向かい、俺は“守る”ための強さを手に入れたつもりだった……」
そう言ってディアスはクロードと視線を合わせた。相変わらず綺麗な顔をしているとクロードは感じた。とても暗い過去を背負っているとは思えないくらいに。
「……そうだったな」
思い返せば、十賢者という勝てそうにもない相手を前にしても、ディアスは身を挺して仲間をかばいながら戦っていた。過去に執着せず、今あるものを必死に守っていこうと、彼の心は仲間という存在によってそう変わっていった。
「だからそういう憎しみを生まないために、レナを必死で守れって言いたいのか?」
「まぁ、それもあるが……」
そう言って少し俯くディアス。
「本題はここからだ……」
そう言う姿は、どこか今までのディアスとは違う妙な違和感があった。どうやらレナのことで言いたいことがある訳では無いらしい。一体何を言い出すというのか、クロードはディアスの言葉を待った。
「実は一昨日、ラクールで武具大会が開かれていた。覚えてるか? 四年前の……」
「ああ、忘れるわけないだろ? お前とあれだけ激しく戦ったんだ」
「……そう言えばそうだったな」
さらに重みを増した声。しかしやはり違和感がある。
「その武具大会に今回も俺は参加したんだが……」
「それがどうかしたのか? ディアスなら余裕で優勝できるだろ?」
彼は今やエクスペルにおいて、周りを寄せ付けないほどの強さを誇っている。それくらいまでに彼の実力は圧倒的であり、クロードもその事実は十分に認めていた。
「俺とお前が決勝で戦ってから一昨日の大会まで、あわせて三回の大会が毎年開かれていた。そして俺はその三回とも優勝していた」
「……そりゃそうだろうな」
「それまでは決勝戦は全て俺とアシュトンの戦いだった。毎年話題になっていた。今年こそはアシュトンが優勝するのか、それとも俺がこの座を守り抜くのか……」
そういえば、とクロードは以前耳にしたプリシスの言葉を思い出した。どうしてもアシュトンは武具大会でディアスに勝てないらしく、毎年その結果をメールで送ってくるのだと。
「で、いよいよ負けたのか? アシュトンに」
おそらく、アシュトンに敗れて優勝できなかったんだろうなと、この話を聞いたときクロードはそう思った。だがこの考えは、半分当たり、半分はずれという結果に終わる。
「いいや、アシュトンは準決勝で、ある男に敗れた。そして俺も決勝でそいつに負けた」
「……なんだって!?」
クロードは信じられないといった表情で立ち上がると、ディアスの方へと駆け寄った。
「な、なんでお前がアシュトン以外の奴に負けるっていうんだよ!? 一対一の勝負なんて、お前にとっちゃ十八番だろ?」
「……ああ、普通なら負けはしない」
剣技で今のディアスに匹敵し得る人物なんて、今のエクスペルではアシュトンくらいしか思い浮かばない。新手の剣豪が出てきたとしても、そのような男は大会以前から噂になるはずだ。もしそうならディアスもとっくにマークしていたであろう。
「だがこれも現実だ。完敗だった。ついさっきのお前のように、喉元に剣を突きつけられてな……」
ディアスはそう言ってぐっと拳を握った。必死に悔しさを隠そうとしているが、歯軋りをする音がクロードの耳には微かに聴こえた。
「調子が悪かったとかじゃ無いのか?」
普段は滅多な事では怒りの感情をあらわにしないディアスに対し、クロードはそれを宥めようと言葉をかけた。
「……俺もそうかと思ってな、だからさっきお前と一本交じえたわけだ。それを確かめるためにだ」
そうか、とクロードは納得した。だから全力で来いと言ったのかと。聞きたいこととは、このことだったのだと。
それと同時に、自分が弱くなったことで良い相手ができなかった事を申し訳なく思う。
「まぁ、さっきの戦いで分かった。決して俺の調子は悪くないと。だからこそ、と言うべきだろうか……」
徐々に感情が籠もった口調に変化していたディアスは、突然クロードの肩をガバッと掴んだ。
「俺はやはり憎い……自分自身がこうも弱かったものだと。自分自身がまだまだ未熟だったんだとな……」
静かに、しかし心の底から吐き出すように、ディアスはクロードに向けて叫ぶ。そんな彼の言葉を、クロードはただただ何も言わずに聞いていた。
「……だがな、本当に憎いのは、そう思ってしまう自分がここにいることだ。俺は仲間と出会って変わったはずだったのに……」
そう言うと、ディアスはすっとクロードの肩から手を離した。彼が掴んでいた部分は未だ熱く、汗でじとっと湿っている。その汗はクロードにべっとりと纏わり付き、なかなか蒸発してくれないような気がした。
「セシル……俺は大切なものを無くした訳でもないのに、こういう感情を抱いてしまう男のようだ……」
さっきとは正反対の、独り言のような語り口。
彼にはきっと色々と葛藤があるのだろう。クロードはただただそれを見ている他無かった。
二人ともしばらくその場を動かずに、そして何の物音もたてずに沈黙を守りながら直立していた。激しい戦慄が聞こえなくなったからか、夜の草原には少しずつ野生生物の鳴き声が溢れていく。
「一週間後、再びラクールで武具大会が開かれる」
そんな沈黙を破ったのはディアスだった。
「今年から新しく催される“団体戦”だ。俺はさらさら出るつもりは無かったが……」
そう言いながら、ディアスは鞘から再び剣を取り出し、それを眺めていた。様々な角度から、まるでそれをじっくりと鑑賞するかのように。
「仲間を守るということはどういうことなのか、そして本当の強さとは何なのか。それを確かめるために団体戦とやらに出たい。クロード、ちょうどいいところに来てくれたお前たちとだ」
少しディアスの声が掠れる。さっきから喋りすぎたからだろうか。
「頼む……協力してくれないか?」
「……その団体戦に、お前やアシュトンを倒した優勝者は現れるのか?」
「分からない。だが、あいつが現れることなど今の俺にはどうでもいい。それよりももう一度、仲間と共に戦いたい……」
「……わかったよ」
クロードはそう言ってディアスに掌を差し出すと、そのままがっしりと熱い握手を交わした。
このまま見捨ててしまうと、ディアスはまた昔の姿に戻ってしまうかもしれない。仲間と育む本当の強さを確認したいという、旧友の申し出を断ることなどできなかった。
「そういうことだったのね……」
「ディアスが負けちゃうなんて、信じられないわ」
そんな二人のやり取りを、近くの茂みに潜んだ残りの仲間たちは息を潜めて眺めていたのだった。
レナはクロードとディアスのことが心配でこっそり見に行くつもりであったが、他の三人は完全な興味本意で彼女について来ていた。
レナ、チサト、オペラ、そしてエルネストの四人は、向こうに気付かれないよう細心の注意を払いつつ、今の光景を目の当たりにした感想をぼそぼそと口々に発する。
「まぁ、始めに剣でかかるところはディアスらしいっちゃディアスらしいが……」
「それにしてもディアスを負かしたっていうその相手、一体何者なのかしらね?」
「最強の剣士敗れる。新手の剣豪の正体とは!? ……なんだか古臭い見出しね。これもボツだわ」
「あ、ちょっとちょっと静かに! 今クロードが何か言ったわ!」
「……ディアス。そのお前を負かせた相手ってのは、何て名前なんだ?」
「ああ、シオンという名前だ。まったく無名の剣士だったらしい」
「シオン……」
「もしかしたら団体戦にも出場するかもしれない。個人団体と連覇を狙いにくる可能性だって十分あるからな」
「そうか」
小さく穏やかな声でそう言ったクロードは、フフ、と笑う。
「わかったよ。もしそいつが出場していれば、僕達の本当の強さというものを見せ付けてやろう!」
「お前……」
その言葉を聞き、クロードにつられて笑うディアス。何年ぶりに見たであろう、本当に微かな彼の笑みだった。
「……すまない」
「こっちこそ、腕はなまっているけど頑張るよ」
クロードはさっきの自分の戦いっぷりから、本当に自分なんかでいいのかと聞きたい気持ちもあった。だが今のディアスはそういうことを問題にしているのではないと思い返し、それを言うのをやめたのだった。
「ただ、問題は他のみんなが了解してくれるかどうか、ってことなんだよな……」
ここで言う他のみんなとは、レナ、チサト、エルネスト、オペラのことだった。
「その団体戦ってのは、何人対何人でやるんだ?」
「1チーム5人だ」
「となると、やっぱりほぼ全員の同意がいるね……」
そう言って親指を顎に当てて考え込むクロード。残りの三人をどう確保するか。
「それなら心配ないわ!」
クロードがみんなを説得する言葉を考えていたところに、突然ガサガサと音をたてながら奥の茂みからチサト達が姿を現した。
「わわっ、チサトさんそんな所に!? ……ってレナ、オペラさん、エルネストさんまで!?」
「まぁ、俺は気づいていたがな……」
驚くクロードとは対照的に、やっと出て来たかといった様子で微々とも動じないディアス。戦士のカンといったところか、惑星ロザリスではブーシーの襲撃を察知することができたクロードでさえも気付かないような事でも、彼にはお見通しらしい。
「そうよ、ディアス。私たちがついているわ!」
「久々にこの紋章銃で暴れるわよ!!」
意気揚々とディアスに語りかける仲間たち。クロードは突然現れた彼らを見ると、かつて十賢者の巣くうフィーナルに乗りこむ直前のことが思い出された。
あの時も似たように仲間全員で志気を高めたものだ。そこに居る者全員が感覚を共有する、その感覚が自分にも溢れ出してくる。
「ディアス……」
「ああ……」
クロードとディアスはそうお互いに顔を見合わせる。
「それじゃ明日、みんなでラクールへと向かいましょ!」
レナが張り切って皆に言う。その一言を皮切りに、ディアス以外の全員が「おー!」と掛け声を上げると、みな高々と手を差し上げるのだった。
「うふふ、なんだか楽しくなってきたわね。あとはレオンって奴が参加してくれることを願うばかりだわ! ね、レナ?」
「ちょっとチサトさんったら、レオンじゃなくてシオンですよ!」
「あ、あらま……じょ、冗談よ! ほ、ほらディアス! ここは笑うところ!」
「はははは……」
チサトが言い終わる前から、ディアスは笑っていた。彼が声を出して笑うことはとても珍しい。その瞳には、明らかにさっきまでとは違う光が差していた。
そんなディアスを見ると、チサトやレナまでもがほっこりした気持ちになる。悩み続ける彼の救いになることができ、改めてエクスペルに戻ってきてよかったと二人は思うのであった。
団体戦にもしもシオンが現れるとなれば、恐らくそれ相応の実力者が他に2〜3人、向こうのチームに居てもおかしくはない。一向で最強と言われているディアスをも超える強敵だ。
だが、仲間の力があれば怖じ気づくことはない。ガブリエルやルシフェルのような、尋常では無い強さを持つ敵を前にしても、力を合わせれば勝つことができた。
自分たちなら何者にも負けない。そう信じる気持ちが自信になる。明日からはその思いを胸に、また一人仲間を加えたクロード達によるエクスペルでの物語が再び幕を開けるのであった。